日本のプレー強度はなぜ上がりにくいのか 2021年のJ1リーグで見えた“精度先行”の潮流
ヨーロッパでプレー経験のある選手から「Jリーグは別のスポーツ」といった発言も
ポジショナル・プレーとは別に、ヨーロッパにはもう1つの潮流がある。プレーの強度を上げていくスタイルで、一時期はストーミングと呼ばれていた。嵐のように激しいという意味だ。ドイツ勢を中心に広まり、こちらもポジショナル・プレーと同様にその考え方が普及しつつある。
サッカーはもともと精度と強度で優劣が決まるので、ポジショナル・プレーと強インテンシティーの追求は当然の流れと言える。ところが、Jリーグでは後者のほうがなぜか浸透していない。ヨーロッパでプレー経験のある選手から「Jリーグは別のスポーツ」といった発言が出てくるぐらいなのだ。
もちろん、どのチームも強度を高めようとはしているのだが、あまり効果が表れていない。例えば、前線からボールを奪いに行っても奪い切れない。守備の強度が高くならないので、精度の面で進歩しているポジショナル・プレーが有利になっているところはあるのだろう。
なぜ、日本のプレー強度は上がりにくいのか。
考えられるのはやはり気候だ。日本の夏は気温と湿度が高く、激しいプレーの継続には不向きだ。プロだけでなく、気候はあらゆるカテゴリーに共通だから、選手が育っていく環境で強度を身に付ける環境がない。プロは当然強度を上げようとするけれども、それに合った選手が少ないし、夏場に高強度のサッカーを続けるのは無理でむしろリスクになる。いずれ強度も改善されていくだろう。ただ、気候が変わらないと、精度先行は今後も変わらないのではないか。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。