平岡エスパルス“らしさ”で5試合ぶりの勝ち点3 チームに変化を与えた指揮官の手腕
【J番記者コラム】広島戦で久々の出番を得た選手たちが期待に応える働き
平岡宏章監督が緊急登板となったJ1リーグ第35節の北海道コンサドーレ札幌戦は、中2日という短い準備期間でそれまで無得点での3連敗を喫していたチームを立て直し、2-2の引き分けとして貴重な勝ち点1を掴んだ。
そこから代表ウィークの2週間の中断期間を挟んで臨んだ第36節のサンフレッチェ広島戦。16位の清水エスパルスと降格圏の17位徳島ヴォルティスとの勝ち点差は「3」。得失点差も「2」しかなく、今節の結果次第では順位が入れ替わり、降格圏へ落ちる可能性もあった。
対戦相手の広島も10月下旬に城福浩監督が退任し、沢田謙太郎ヘッドコーチが新監督に就任したが、その後の2試合を1分1敗とし、いまだに勝利がなくすでに残留は決めているものの新監督とともに早く勝利を掴み、一桁順位を狙いたい試合でもあった。
清水は出場停止や怪我人の関係で前節から3人を入れ替えた。そのうちの2人は怪我で長期離脱し、12試合ぶりにメンバー入り即先発出場のMF後藤優介。そして、6月6日のルヴァンカップ・プレーオフステージ第2戦の鹿島アントラーズ戦(1-2)で頭蓋骨骨折という大怪我を負ったDF鈴木義宜がリーグ戦174日ぶりに先発復帰となり、もう1人のFW鈴木唯人を含めて、それぞれに平岡監督の期待に応える活躍を見せてくれた。
後藤は本来のFWではなく左サイドハーフとして起用されたが、効果的なクロスを何本も上げ、献身的に動き回り広島守備陣を翻弄し、後半16分に交代したが、スプリント回数は22回と鈴木唯、FWチアゴ・サンタナの23回に続くスタッツとなり、攻撃を引っ張った。
鈴木唯は前線からプレッシャーを掛け、何度もゴールへ迫った。前半30分にチアゴ・サンタナが挙げた決勝ゴールも鈴木唯がタイミングよく広島DFの裏のスペースを突いて放ったシュートがポストに弾かれ、そのボールを押し込んだゴールだった。
鈴木義は今シーズンに大分トリニータから完全移籍して来たが、大分時代は2017シーズンから19シーズンまで3年連続フルタイム出場し、20シーズンも脳震盪の影響で欠場した1試合以外は全試合出場を果たした。
その「鉄人」は19試合ぶりの先発であっても安定した守備からの的確なシュートブロック。そして、唯一の得点の起点となったハーフライン辺りから鈴木唯の動き出しに合わせたスルーパスなどブランクを全く感じさせないプレーで勝利に貢献した。風貌とその落ち着きからベテラン選手のようだが、まだ29歳。これからが益々楽しみな選手の1人だ。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。