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歴代最高の就任後7戦7勝 ドイツ代表監督ハンス=ディーター・フリックとは何者か?
運命を変えた2006年夏のレーブ監督からの“ラブコール”
そして運命の電話がかかってきたのはその翌年だった。06年夏、ユルゲン・クリンスマンの後任として代表監督に就任することになっていたレーブから代表アシスタントコーチとして誘われたのだ。
レーブの片腕として戦術サポートをしたフリックの尽力もあり、ドイツ代表は08年欧州選手権(EURO)2位、10年ワールドカップ(W杯)3位、12年欧州選手権ベスト4、そして14年W杯では優勝を果たす。
14年9月からはドイツサッカー連盟(DFB)のスポーツディレクターとしてドイツサッカーの新しいプロジェクトを率いた。17年にホッフェンハイムにスポーツ部門部長として戻るが、これはうまくいかず。そして19年、ニコ・コバチのアシスタントコーチとしてバイエルンへ。現場に戻ったフリックは次のような喜びのコメントをしている。
「また選手と一緒に、そしてニコ・コバチと一緒に仕事ができるのを楽しみにしている。話が来た時、もう長く考えたりはしなかった。バイエルンは私の心にあるクラブだ。トップアドレスなんだ」
これまで、どちらかと言うと裏からチームを支える存在だったフリックが急遽表舞台に立つようになったのは、コバチがフランクフルトに1-5で完敗した後に解任され、暫定監督としてチームを率いることになった時だ。
「監督としての経験が乏しい」と世間はあくまでも一過的な対応だと思っていたが、フリックはチームを立て直すどころか、さらに新しい次元へと持ち上げ、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)をはじめ年間6冠という偉業を達成してみせる。
素顔のフリックはいつでも謙虚だ。どれだけ好成績をあげても周りへの感謝をまず口にする。
「数々のタイトルの裏には、ハードな仕事と毎試合高いモチベーションで取り組んでいたチームがあったのだ」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。