初陣のメンバー選考で涙も… 元教え子が明かす「日本代表監督・森保一」の素顔と信念 なぜ選手と人を惹きつけるのか
初陣のメンバー選考で思わず涙「自分にとっては難しい」
森保監督が「選手に寄り添ってくれる」(水本)タイプであることは、オーバートレーニング症候群に苦しんだ森﨑浩司氏(現・広島アンバサダー)の話を聞き続け、再びピッチに立つきっかけを作ったことでも窺える。水本も、「これはあとから聞いた話ですが」と、就任1年目の初陣でのあるエピソードを明かす。
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「(広島の監督に)就任して間もない頃は、選手とすごく距離が近くて、グラウンドでたくさんの話をしてくれていました。2012年の浦和との開幕戦、練習、キャンプとこなしてきて、全員が頑張っているなかで、ベンチ入りメンバー18人を決める作業は自分にとってはものすごく難しいと、涙を流してくれたそうです。これは森保監督を象徴するエピソードの1つだと思います。ほかにも、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)で、日本サッカー協会の補助もあって、ビジネスクラスで(飛行機)移動させてもらった際、自分はエコノミーでいいからとにかく選手が優勝に向けてプレーできるように、と。常に寄り添ってくれるところは、森保監督が選手や人を惹きつける魅力だと感じています」
広島でリーグ優勝3回を成し遂げた森保監督も、常に順風満帆だったわけではなく、2017年には2勝4分11敗と成績不振により、辞任を経験した。当時、厳しい声にも直面するなかで、決してネガティブな顔は見せなかったという。
「2016年のシーズン後半からあまり上手くいかなくなって、(同年に)得点王だった(ピーター・)ウタカがチームを離れて、そのまま2017年のシーズンに入っていきました。得点力が課題で、ディフェンスも守り切れず、チームとして結果が出なかった。それでも、僕たち選手の前では見せないだけかもしれないですけど、ネガティブな森保監督は見たことがありませんでした。良い時も悪い時もブレず、常に最高の準備をする――。難しい状況のなかでもその姿勢を示してくれたと思います。これまでのキャリアで、5年半は(1人の監督と)一緒にやった期間としては一番長くなりますが、サッカーはもちろん、それ以外の部分でもたくさん学ばせてもらいました。何よりも人間性が素晴らしくて、森保監督のような人間性を備えた人になりたいと思いました」
18年7月に日本代表の監督に就任以降も、3年以上にわたって信念に基づいてチーム作りをしてきた森保監督。厳しい戦いを強いられているカタールW杯アジア最終予選でも、底力を示して7大会連続での本大会の切符を勝ち獲りたいところだ。
[プロフィール]
水本裕貴(みずもと・ひろき)/1985年9月12日生まれ、三重県出身。三重高―千葉―G大阪―京都―広島―松本―町田。1対1の強さと統率力を武器とする熟練のセンターバック。2015年3月の日本代表戦ではバヒド・ハリルホジッチ監督(当時)からボランチで起用されるなど、ユーティリティー性にも定評がある。
(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)