「日本の高校サッカーが羨ましい」 W杯最終予選で苦戦の中国が抱える育成の“問題点”
中国の大学サッカーリーグは「日本のサークル活動に近い状態」
したがって、中国では下部組織加入やサッカー学校に進むということは、一般的なルートから大きく外れる選択となり、選手自身の覚悟はもちろんのこと、彼らの家族にとっても大きな決断となります。学歴社会が強い中国において、この決断が容易ではないというのは想像に難しくありません。選手が希望しても、家族が反対し、サッカーの道を諦める選手も多いと聞きます。
また、近年では三笘薫選手(筑波大出身)や長友佑都選手(明治大出身)など、大学サッカーが大きな選手供給の場となっている日本ですが、中国では大学サッカーからプロへ行く選手は全くいません。シャ・シュサイ氏もこのように話しています。
「サッカー推薦という形で下部組織やサッカー学校の選手が、サッカーで大学に入学するのはあります。それがプロになれなかった選手の一個の出口戦略、そしてプロサッカー選手になる道との別れではありますが、それでも1つの大学で1名程度しかサッカー推薦はありませんので、日本以上に圧倒的に狭き門です。大学リーグは一応ありますが、日本のそれとは実力や運営など全く異なり、日本のサークル活動に近い状態です」
最後に私の意見ですが、この下部組織やサッカー学校が中国サッカーにとって完全に失敗というわけでは決してなく、例えば現中国代表のエースFWウー・レイは、上海にあるサッカー学校「根宝足球基地」に中学生から進学し、プロ選手の夢を叶え、そして現在ではスペイン1部エスパニョールで活躍しています。
しかし、例えばガンバ大阪のユースチームに上がれなかった本田圭佑選手や、明治大で頭角を表した長友選手など、高校年代以降から才能が開花し、その後ヨーロッパで活躍する選手は日本で非常に多いのに対し、現在の中国だとそういった選手が生まれない環境になってしまっていると言えます。
下部組織やサッカー学校の、選手たちへのサッカー以外のサービス提供を増やし、また高校世代でサッカーを辞めてしまう人をいかに少なくできるか。日本の高校サッカーに近いものを構築できるか。ここが中国サッカー長期的な発展のポイントの1つになってくるかと思います。
[著者プロフィール]
久保田嶺(くぼた・れい)/1991年生まれ、埼玉県出身。中国最大のサッカーメディア「懂球帝」にて、日本人初の公認アカウントとして活動をしている。
(久保田嶺 / Rei Kubota)
久保田嶺
1991年生まれ、埼玉県出身。「Rouse Shanghai Co.,Ltd.」代表。日系企業の中国インバウンド事業やマーケティング、中国サッカー選手/指導者のマネージメントを手掛ける。自身の中国SNSフォロワー数も40万人と中国サッカー界で一番有名な日本人としても活躍。日本へ中国サッカー情報を発信する。