長谷部&鎌田所属フランクフルト、指揮官の次なる策は? 心のスイッチをいかに入れるか
心にゆとりを持つのはいいが、競り合いに飛び込めないのでは意味がない
オリンピアコス戦では上手くいった。でもそのままで問題がないわけではない。今度は“ロッカーハイト”が強くなりすぎると足元をすくわれる。続くリーグのボーフム戦では相手の規則的かつ組織的な守備と勢いのあるカウンターに手を焼いて0-2で敗れた。
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キャプテンのセバスティアン・ローデはオリンピアコス戦後に「今日上手くやったことをきっかけにやっていかないと。ボーフムにとってはすべての試合がハイライトだ。激しい競り合いが予想される。僕らも戦いを受け入れてプレーしないと」と話していたが、まさにそんな展開となり、相手のやりたいサッカーをそのまま許してしまった。
グラスナーは「我々は1対1における競り合いの勝率がこの試合、40%だけ。これでは足らない」と憤った。心にゆとりを持つのはいいが、それがために足を止めたり、競り合いに積極的に飛び込めないのでは意味がない。あくまでもやるべきプレーはやれなければならないのだ。相手も必死だ。だからこそ戦いを受け入れ、その中で冷静さを保ち、軽率なミスをしないように集中力をコントロールし、相手の隙を突く勇敢なチャレンジを繰り返せなければならない。
ローデははっきりとこう語っていた。
「ブンデスリーガとはどんなリーグか、どんなプレーをしなければならないのか。みんな気づいてくれたことを祈っている」
すべてが狙い通りにいくなんてことはない。選手の側にも正しい心構えが必要なのだから。それでも「どうすれば選手の心のスイッチを巧みに入れることができるだろう?」というのを指導者はいつでも考えているのだ。メンタル状態を試合に合わせて整理して準備する。そのための様々な仕掛けを指揮官は考える。
グラスナーが次にどんなアプローチでチームを鼓舞していくのかに注目したい。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。