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ドイツで現存する最後のサッカー選手? 板倉滉の同僚を「代表に!」…ファンが叫ぶ理由
【ドイツ発コラム】ドイツ対ルーマニア戦、掲げられたシモン・テローデの横断幕
「ドイツでは典型的なCF(センターフォワード)は死に絶えた」
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そんな声が聞かれるようになったのはいつからだろうか。ドイツ代表をブラジル・ワールドカップ(W杯)優勝に導いた立役者の1人、CFミロスラフ・クローゼが代表引退を表明して以来、ドイツではペナルティーエリア内で存在感を発揮するCFタイプの選手がほとんど見られなくなっている。
代表に選手を送ろうにもそもそもブンデスリーガで活躍しているドイツ人CFが少ない。ヨアヒム・レーブ前監督はマリオ・ゲッツェやレロイ・サネといった選手を“偽の9番”として起用したり、トーマス・ミュラーを最前線に置いたりしてなんとか対応しようとしたが、やはり本職の選手に代わる働きを求めるのは酷だ。
ハンシィ・フリック新監督就任後、ドイツ代表は5戦5勝。カタールW杯出場権も欧州最速で決めた。それでも何かが物足りない。ドイツのサッカーファンでそう感じている人は多い。そんななか、先日ハンブルクで行われたドイツ対ルーマニアのW杯予選では「ハンシィ、テローデを代表に!」という横断幕がいくつも見られたのだ。
テローデ? 一般的なサッカーファンだったらまったくピンとこない名前かもしれない。それもそのはず。シモン・テローデは1部リーグ通算58試合で、ゴール数はわずか10。決してスター選手とは言えない。そんなFWの名前が、なぜドイツのサッカーファンから挙がってくるのか? それは現存する最後のCFタイプのドイツ人選手かもしれないからだ。
得点を取ることにかけては間違いなく高いレベルにある。最初の指導者としてU-10で監督を務めた父親から、テローデは「インサイドで丁寧にゴールを狙え」と言われ続けたという。そうした教えのおかげもあり、並外れたシュート力を持っているわけではないが、GKの届かないところへ正確にシュートを流し込むスキルを身に付けた。
U-19時代にはU-19ブンデスリーガで24試合21得点を挙げるハイパフォーマンスで得点王に。だがプロデビュー後は度重なる怪我の影響もあり、活躍することができない時期が長く続く。プロチームからオファーがもらえず、トライアルも合格できない。当時3部リーグ相当のケルンU-23へ移籍したのだが、ここで出会ったのが恩師フランク・シェーファーだ。FWとして身に付けるべき戦術を丁寧に手ほどきされたことで、テローデはようやくプレー機会を得ることになった。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。