データで検証するハリルジャパンの現在地 欧州勢相手に見せた“二つの顔”とは
再び顔を覗かせた日本の悪癖
同様に、ボスニア戦のパスのデータを見てみよう。
いつもの日本らしいデータが戻ってきた。だが、残念ながらそれは必ずしもポジティブな意味ではない。自分たちで多くの時間ボールを保持していても、なかなか相手のゴール前に入っていけず、ひたすら相手の守備ブロックの外でパスを回そうとする日本の姿だ。
これまでワールドカップのような世界の舞台で何度も見てきた悲しい日本の姿でもある。相手より240本も多くのパスを、10%近く高い成功率で回していた。ペナルティーエリアへの侵入も48本と相手の15本の3倍以上のトライをしていたが、その成功率は日本35%、ボスニア67%という結果だった。ペナルティーエリアへのパスのうち何本がシュートに繋がったかを見ると、初戦の36%から21%と大きく数字を落とした一方、相手チームは29%から53%と激増してしまった。ブルガリア戦同様にペナルティーエリア内で成功したパスのうち何本が枠内シュートに繋がったかを見ると、日本の18%に対してボスニアは60%と3倍以上の開きがあった。結果こそ1-2という僅差のゲームだったが、残念ながらデータから日本の勝利の匂いは嗅ぎとれなかった。
これまでの日本代表には二つの顔があった。アジアとの戦いにおいて、圧倒的な技術差で相手をねじ伏せてきた。それはポゼッション率、パスの成功率、全てのデータにおいて相手より優れていることが多かった。
一方、世界に出て行くと、その圧倒的な力の差を見せることは難しい。ボールを回して支配するのではなく、ボールを保持したとしても奪われ、カウンターで失点した。あるいは、相手に圧倒的に支配されることすらあった。
アジアでは強者の戦術を取り、世界では弱者の戦術を取らざるを得なかった日本だが、今回のキリンカップでは少し異なる。ハリル監督以降、シンガポール戦をはじめアジアのチームを相手にしても、いくつかの試合で相手の方が高いポゼッション率でありながら、そのスピード感、迫力、点差で圧倒した試合ができていた。今回の変化は、アジアにおいても世界においても同様の戦い方を目指すというシングルスタンダードを採用したことだ。