「大きな武器になる」 元日本代表DF闘莉王が冨安健洋に攻撃参加を期待するワケ
闘莉王氏は吉田に「冨安の良さを引き出すことにトライしてほしい」と期待
闘莉王氏は現役時代にDFながら史上初めてJリーグ通算100得点以上を記録。その型破りなプレースタイルは、ときに批判も浴びた。しかし、その希有なスタイルは多くの観客を湧かせ、いくつもの膠着(こうちゃく)した試合を打開してきた。もちろんアーセナルと違い、日本代表ではセンターバック(CB)が主戦場となるが、試合展開や、ビルドアップの立ち位置次第では冨安の機を見た持ち上がりや、飛び出しが有効になるという。
そして、それを可能とする不可欠な存在の名前を挙げた。それが、最終ラインでコンビを組む吉田麻也(サンプドリア)だ。
「僕は麻也の存在が、冨安選手にとっては非常に大きいと思っています。麻也からはポジショニングの良さや、精神的な強さなど学ぶべきことが多く、彼の成長にもつながっているはずです。その麻也にもパスセンスはありますが、冨安の良さを引き出すことにぜひトライしてほしい。冨安選手も遠慮気味にプレーするのではなく、麻也の指示で彼の可能性を引き出してあげてほしい。それだけの人間性と、ポテンシャルを彼らは備えています」
最後に、聞かれ飽きただろう、あの話題を振ってみた――。南アフリカの地で鉄壁を誇った中澤佑二氏と闘莉王氏のCBコンビは、日本代表史上最強の呼び声も高く、その後多くの代表選手たちが彼らと対比されてきた。吉田も長年、その背中を追ってきた1人だ。
「吉田と冨安のCBコンビは、中澤さんと闘莉王さんを超えられるのか?」
その質問に、闘莉王氏は「これはW杯の結果でしか証明できない」と即答し、温かなエールを込めて言葉を重ねた。
「申し訳ないですが、W杯の数字と結果がすべてだと思っています。俺たちを追い越せるような活躍ができれば、初めて周りの人たちも、そういう目で見ると思うんです。サッカーは常に歴史と比較されるスポーツですし、結果でしかそれを証明できない。ただ、僕自身もどういう結果になるのか、楽しみに彼らを見守っていきたいと思っています」
南アフリカW杯直前のザースフェーの宿舎で、闘莉王氏は「ヘタクソな俺たちは、泥くさくやらないといけない」と、仲間たちに訴えかけた。その結果、日本代表は本大会で選手全員が泥くさく守備的に戦い、自国開催以外で初めて決勝トーナメントへとたどり着いた。
その闘将が冨安の攻撃的なプレーに期待を寄せるのは、日の丸を背負ったあの日の自分があの時やりたかったプレーを彼に重ね合わせているのだろう。アジア最終予選は残り6試合。攻撃的な冨安と、それをカバーする吉田を、ここからカタール行きの切符を掴み取る大事な一戦で見ることができるかもしれない。
(馬場康平 / Kohei Baba)