ウェルベックに見たアンリの陰 マンUを追われた23歳FWハットトリックの波紋

 

マンUを熱愛するOBですら絶賛「とてつもないゴール・マシーンとなるだろう」

 

「あのウェルベックの3ゴールはまるでアンリのゴールのようだった。もちろん、今の時点で単純にアンリとウェルベックを比較することはできない。アンリはすでに世界の頂点を極めた選手だからね。

 しかし、ベンゲルがアンリに何をしたか思い出して欲しい。まだアンリが17歳でモナコに所属した頃に対戦したことがあるが、あの時の彼はまだまだ未熟な左ウィンガーで、まともにボールを操れることもできなかった。しかしアーセナルへ来て、あっという間に飛躍した。

 もしもベンゲルがアンリに教え込んだことをウェルベックにも叩き込めたら、そしてコンスタントに結果を出せるようになったら、ウェルベックはとてつもないゴール・マシーンとなるだろう」

 ディ・マリアの移籍金に5970万ポンド(約107億4700万円)を積み、ファルカオには1年間のレンタル料だけで600万ポンド(約10億8000万円)をぽんと支払ったあげく、1325万ポンド(約23億8500万円)という途方もない年俸を提示。一方、ウェルベックはバーゲンといって過言でない1600万ポンド(約28億8000万円)で放出したその決断に激怒したガリー・ネビィルは、同じ舌でウェルベックが新天地でアンリの再来となる可能性を語った。

 あのウェルベックの3ゴールには、誰もがかつてのアンリの陰を見たに違いない。しかし現時点でそれを口にする勇気を持っていたのはネビィルだけだった。

 無論、マンチェスター・Uを熱愛するOBで知られるガリー・ネビィルのこの発言には、生え抜きを放出し、高額な有名選手を買いあさる昨今のユナイテッドの金満主義に対するアンチテーゼも含まれているのだろう。

 しかし、判官贔屓の伝統がある日本人の筆者としては、マンチェスター・Uという都を追われたウェルベックがロンドンで再起し、第2のアンリとなって古巣クラブと戦うなんてシーンを想像するだけで身震いするような興奮を覚えてしまう。

 そして第2のアンリ登場の予感は、「あんなに速いとは知らなかった」と語った際に見せた、とてつもなく素晴らしいものを見た後のため息に近いベンゲル監督の口調にもしっかり表れていた。

【了】

森昌利●文 text by Masatoshi Mori

 

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