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ウェルベックに見たアンリの陰 マンUを追われた23歳FWハットトリックの波紋
マンUで本来の力を発揮できなかったウェルベック、そして香川
ウェルベックが大器だということは、17歳の彼(といっても18歳になる11日前だったが)が決めたプレミア戦デビュー・ゴールを見ても明らかだった。
2008年11月15日に行われたマンチェスター・U対ストーク戦、ウェルベックは後半18分、元韓国代表MF朴智星のサブとして登場した。
今よりも髪を短く刈り込んでいたウェルベック少年は、ベルバトフの縦パスを受け、右サイドにいたアンゴラ代表FWマヌーショにワンタッチでパスを送ると、そのリターンをもらって、ゴール前25メートルの位置から相手の虚をつくかのように突如として右足を振り抜き、観客の度肝を抜く豪快なミドルシュートを決めた。
5-0でストークを下した試合の4点目。とても17歳のゴールとは思えない、強烈なゴールだった。
しかしウェルベックはその後、ひざの故障で伸び悩み、2010年1月からプレストン、そして同年8月からはサンダーランドへレンタル移籍。約1年半の武者修行を積んだ形でマンチェスター・Uへ戻った。
その後の履歴については、香川真司の在籍期間ともかぶったことで、日本のサッカーファンもかなり詳しいと思う。残念ながら今夏、我らが日本のNO.10が戦力外となったように、ウェルベックもファン・ペルシー、ルーニーに加え、コロンビア代表FWラダメル・ファルカオが加入したことで、メキシコ代表FWハビエル・エルナンデスとともにマンチェスター・Uから押し出された格好になった。
この際、6歳でマンチェスター・Uに見いだされた生え抜きの放出には、反対意見が溢れた。とくに元主将のガリー・ネビィルは移籍金わずか1600万ポンドでライバルのアーセナルへ売却した愛する古巣クラブの判断を「理解不能の論理だ」と激しく非難した。
しかし、ファン・ハールは当然のように放出理由を語った。毅然とした態度で、しかも残念そうな表情を忘れず、「ウェルベックは3年間マンチェスター・Uでプレーしたが、記録を見れば、それがルーニー、ファン・ペルシーのレベルに達していないのは一目瞭然だ。そしてルーニー、ファン・ペルシーの記録がマンチェスター・Uの基準である」と記者団に話した。
マンチェスター・U立て直しにかけるオランダ人名将がそう語ったのが9月10日。それからわずか4週間後、欧州CLの晴れ舞台で自身初の一軍ハットトリックを記録して、ウェルベックはこう語った。
「(ハットトリックを決めて)本当なら変わったといいたいところだけど、そうじゃない。これまでは(マンチェスター・Uでは)中盤でプレーすることが多くて、ゴールを量産するチャンスがなかったんだ。でも今はゴールに近いところでプレーできる。これならこれからもゴールネットを揺らすことできると(試合が)楽しみになるよ」
つまり、自分自身は変わっていないが、ポジションが変わった。希望するセンターフォーワードの位置でやればこのくらいはできるし、マンチェスター・Uでもできたはずだ、といっているのだ。
これと同じことを、昨日のアンデルレヒト戦で見事なループパスで1アシストを決め、後半の2点の起点にもなった香川もいいたかったに違いない。
「俺の一番得意なポジションでやらせてくれ。そうすれば必ず結果は出せる」
そうした意地、気持ちが、先日の2人のプレーのばねになったということは簡単に想像できる。