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ウェルベックに見たアンリの陰 マンUを追われた23歳FWハットトリックの波紋
ベンゲル「あれだけ速い選手だとは知らなかった」
「あれっ、マッチボールをもらうのを忘れた! 後でもらえるよね!?」
ダニー・ウェルベック本人曰く、最後のハットトリックは「マンチェスター・Uのリザーブ戦だったと思う」ということで、一軍では初めてのハット。その記念すべき試合のマッチボールをもらい忘れたことに気がついたイングランド代表FWの表情には、23歳の若者らしい初々しさが漂っていた。
ガラタサライ戦4-1勝利。グループ開幕戦は強敵ドルトムントとのアウェイ戦だったとはいえ0-2完敗。このホーム初戦となる第2戦は必勝が期されていたが、後半7分の時点で4-0と大量リードした。最終的には4-1になったが、この楽勝の立役者は間違いなくハットトリック・ヒーローのウェルベックだった。
後半15分にGKシュチェスニーがまたも欧州CL戦で一発退場を記録した上、PKで1点を献上。そういった、指揮官としては手放しで喜べないハプニングもあり、試合直後に会見場を訪れたベンゲルの表情はそっけなく、大勝の余韻はなかった。しかし、ウェルベックの話になるとさすがに相好が崩れた。
「この試合でウェルベックが素晴らしいフィニッシャーであることを学んだ。今日のどのゴールも技術的に優れていた。しかしあれだけ速い選手だとは知らなかった。(あのスピードは)まさに電撃的だった」
表面的には淡々と語ったが、その言葉には明らかな賞賛が込められていた。
そしてこのコメントからは、わずか1600万ポンド(日本円に換算すれば約28億8000万円で、「わずか」というには語弊もあるが)の移籍金でライバル、マンチェスター・Uから獲得した、ウェルベックの資質に対する興奮も伝わってくる。
監督とすれば、それはまるで金鉱を掘り当てたような感覚だろう。速さ、強さ、上手さを披露したウェルベックのハットトリックは、かつてのアーセナルで愛された偉大なフランス人ストライカーを連想させた。
まずは1点目。サンチェスのスルーに鋭く反応したゴールだった。左サイドから中央に切れ込んだチリ代表FWが右足をクロスさせ、サンチェスに寄った相手DF2人の真ん中を縦スルーで切り裂くと、一瞬で相手を置き去りにしたウェルベックがボールに飛びつき、1対1となって前につめてきたGKの股を抜く正確無比なシュートで先制点を奪った。
2点目は強さと速さを見せつけた。後方から味方がヘディングで押し込んだボールを相手DFがクリアミスで後ろに流す。そこに飛び込んだのがウェルベック。ガラタサライ左SBメロとこの浮き球を競り合い、頭でちょこんと前に押し出すと、あっという間にブラジル代表DFをちぎってPA内左サイドに侵入。またもGKとの1対1に持ち込み、かなりタイトなアングルまで侵入したが、今度はGKの手をかいくぐるように、ファーサイドのコーナーを狙って、右足のインサイドで計ったようにカーブをかけたシュートをきっちり流し込んだ。
3点目は後半7分。左サイドに張っていたウェルベックがボールを受けると、中央を並走していたサンチェスに横パスして、そのまま中央に走り込む。するとサンチェスからボールをもらった右サイドのチェンバレンがスルーパス。相手DFを置き去りにしてその裏に飛び込み、そのボールに飛びついたのはまたもやウェルベック。足元に飛び込んだGKをあざ笑うかのように、絶妙のタッチで小さなループシュートを放ち、美しいゴールでハットトリックを完成させた。これでは名将ベンゲルも「技術的にも優れていた」というしかない。