ドイツで1年半ぶりにミックスゾーン復活 原口元気の丁寧な対応、そこにしかない価値

ここでしか聞けない話、ここでしか見れない表情、ここでしか感じられない雰囲気

 最後まで丁寧にこちらの質問に答えてくれた原口がゆっくりと控室へ向かう後姿を見送りながら、「選手が何を話したかだけが大事なのではないんだな」というのを改めて感じた。インタビューに応じる原口の後ろから「こんにちは!」といじってくる選手がいる。控室に入った選手から「ヤ――――!」という勝利の雄たけびが聞こえてくる。テレビインタビューを受けながらそれを耳にして表情を和らげる選手がいる。

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 ミックスゾーンには毎試合異なる雰囲気があるのだ。饒舌に自分やチームのことを語れることもあれば、どんなことを問いかけたらいいか分からなくなくなるほど張り詰めた空気感があったりする。選手が一つの言葉を紡ぎだすのにものすごい時間をかけてから話し出すことがある。フル出場した直後と、途中交代した直後ではもちろん落ち着き具合も違う。試合後しばらくしてリモートで行うインタビューはそれこそ全く別物になる。

 たとえそれが同じ言葉だったとしても、話される状況が違うのであれば同じ意味にはならない。話し言葉をそのまま文字にすれば言わんとすることすべてが分かるわけではないのだ。それぞれ言葉の裏には背景がある。

 そうした現場の息吹を感じて、そのなかで選手と向き合って、言葉を交わす。ここでしか聞けない話、ここでしか見れない表情、ここでしか感じられない雰囲気が確かにある。ミックスゾーンの存在価値ってやっぱりとても大切なんだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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