森保監督は解任されない 良くも悪くも重視される「日本らしい」はツッコミどころ満載
【識者コラム】これこそ森保監督の解任はないと考えられる大きな理由だ
カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選が始まって日本代表は早くも2敗目を喫した。オマーンに敗れ、中国に勝ち、サウジアラビアに負け。ファンの間からは森保一監督解任論も出てきているが、日本サッカー協会(JFA)がこの段階で解任することはないだろう。
このままでは予選敗退でワールドカップに出場できないと危機感を募らせる気持ちは理解できるし、試合内容に失望するのも無理はないが、森保監督は解任されない。なぜ解任されないのか、理由はいくつかある。
監督解任は成績不振、あるいは選手の求心力を失ってチームをまとめられないと判断された時に起きるのが一般的である。もちろん、成績不振と求心力低下はセットになることもある。これ以外の第三の理由としては、雇い主と契約交渉がまとまらないというケースもある。何らかの条件がネックになって契約がまとまらずに解任という形に至るわけだ。
森保監督の場合、3試合の結果は満足のいくものではないにしても、まだ予選10試合のうち3試合を行ったにすぎない。成績不振とするには早すぎる。求心力のほうは分からないが表立って問題があるようには見えない。契約が難航しているという話も全く聞かない。
ただし、それでも解任となる場合もないとは言えない。バヒド・ハリルホジッチ監督の解任がそれに近かった。
ハリルホジッチ監督が解任されたのは2018年4月9日。すでにアジア予選を通過しており、ロシアW杯まであと2か月という時期だった。3月のベルギー遠征での試合内容と結果が惨憺たるものだったのは事実だが、親善試合にすぎず、それで成績不振は無理がある。JFAの田嶋幸三会長の説明では「信頼関係の薄れ」、要は求心力低下が解任理由だった。ただし、求心力低下の程度はよく分からない。ハリルホジッチ氏は解任について訴訟を起こしたぐらいで、解任理由に納得していなかった。
ただ、求心力低下の程度は選手の多数決で決めるようなものではなく、いわば会長の判断に懸かっている。会長が解任と決めたら解任なのだ。森保監督を解任するか否かについても最終的な判断は田嶋会長に委ねられている。そして、これこそ森保監督の解任はないと考えられる大きな理由だ。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。