37歳元Jリーガーの“監督人生” 指導現場で実感、ライセンス制度の在り方へ思うこと
当面の目標は選手を育て、なおかつ、チームに結果をもたらしていくこと
今季に入ってからは、試合で出た課題を克服する練習メニューも取り入れたという。ポゼッションに難があれば、それを意識させるようなルールをメニューに付け加え、さらに攻守両面での修正につながるようなトレーニングへと発展させていく。また、ポジションのコンバートも積極的に行っているといい、その理由も多様で実に興味深い。
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「センターバックとして獲得したのに上手くプレーできていなかった選手がいたんです。サイドバックもやっていたと聞いたので、じゃあそっちでチャレンジさせてみようと。次の試合からそこでプレーさせてみたらパフォーマンスが良かったので、しばらくサイドバックで出させて、調子が落ちてきたなと思ったら、またセンターバックに戻すようなことはやっていますね」
戦術的な相性やポジションの適性だけでなく、好不調の波や中短期のパフォーマンスによっても起用法を変えて選手を活かそうとするその手法は、一昨年まで現役のプロサッカー選手だったという感覚が為せる業なのかもしれない。
そうした日々の中で今夏、大卒ルーキーの新井晴樹がJ1のセレッソ大阪に期限付き移籍を果たした。いわゆる“個人昇格”は、戦力的には痛手でも、チームや監督にとっては歓迎すべき成果でもある。
「ティアモってJ1のクラブへ輩出できるような選手がいるのか。誰が指導しているんだって話になる」
ティアモ枚方に行けば成長できるという評判が広まれば、クラブ自体の評価はもちろん、小川に対する指導者としての評価も変わってくる。「僕の評価は、チームの評価がイコールですから」。当面の目標は、選手を育て、チームに結果をもたらしていくことになる。
意欲的にして野心も満点。監督としてのキャリアは順調なスタートを切ったように見えるが、大きな壁として立ちはだかるのが指導者ライセンス制度だ。選手時代にC級ライセンスを取得し、ティアモ枚方の監督就任後にB級を取得する予定だったが、新型コロナ禍によって講習会が延期となり、現状はB級の前期課程をやっと終えたばかり。今オフには後期課程を終え、B級を取得する予定でも、Jリーグで指揮を執るために必要なS級を取得するには、A級取得のプロセスを踏まなければならない。
このライセンス制度については、彼なりに意見がある。今後の日本サッカー界のメリットを考えての発言は、現役時代にJリーグ選手会で積極的に活動をしていた姿がフラッシュバックする。小川は現役時代のプレースタイルと同様に、常に全体を見て物事を考える男なのだ。
今井雄一朗
いまい・ゆういちろう/1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。Jリーグの名古屋グランパスや愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする。現在はタグマ!にて『赤鯱新報』(名古屋グランパス応援メディア)を運営し、”現場発”の情報を元にしたコンテンツを届けている。