「大型補強」対決に敗れた清水、降格圏と再び“3差” 未完成チームに見える手詰まり感

攻撃に切り替わった時の選手の動きや、守備時の一歩の詰めに甘さ

 結果だけを見れば完敗だが、試合内容は開始早々に失点をして神戸に余裕を与えてしまったこともあるが、前半の神戸のシュートはこの1本のみ。後半も3本しかシュートを打たせず、清水の2失点ともディフレクションから日本代表GKの権田でさえ反応することのできないシュートだった。逆にチアゴ・サンタナの2度の決定的なシーンは、神戸攻略のためのクロス攻撃から準備した形からのもの。もちろん、神戸GK飯倉のビッグセーブもあったが、「プレーの部分を考えると引き分けでも妥当だった」とミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が振り返るように、清水に運がなかった試合と言えるかもしれない。

 ただ、攻撃に切り替わった時の選手の動きが少なく、手詰まり感は否めない。チャンスの数もチームが感じているほど多くはなかった。「得点を決めなければ勝てないので、そこはこれから間違いなく修正していく部分」と、この試合ではシュートチャンスがなかったベンジャミン・コロリは話した。また、ゴール前での守備の人数は揃っているが、あと一歩の詰めが甘い。1失点目の場面では「スカウティングのなかで大迫選手も武藤選手も『前に入るのが上手い』というのは分かっていたが、相手の前に入る対応よりもゾーンを締めることを意識した」と井林は話していた。単純な話だが、勝利するためには失点をせずに得点を奪うこと。あまり難しいことは考えずにまずはシュートを打つこと、そして相手には簡単にシュートを打たせないことが大事だと改めて感じた試合となった。

 まだまだチームは未完成の状態であるが、この試合では今シーズン初めて外国籍選手枠上限の5人がピッチに同時に立つ時間帯もあり、別メニューの選手も現在は3人だけとメンバーも揃ってきてはいる。しかし、今節の結果で16位の徳島ヴォルティスがベガルタ仙台に勝利(1-0)し、再び降格圏との勝ち点差は「3」となった。イベントが開催され名称がついてからは10年間無敗を誇り、J2に降格した2015年でさえ負けることがなかった「鹿児島デー」の神話は終わりを告げたが、新監督の下、多くの新加入選手で構成され生まれ変わった新生清水エスパルスが、また新たなスタートラインに立ったと考えればこの敗戦も意味がある。ここからは他チームの結果でもなく、神頼みでもなく、自信を持って自力で勝ち点を積み重ね、残り8試合となってしまったが早く残留争いを抜け出し、来シーズンに期待が持てる戦いを見せてくれることをサポーターは願っているだろう。

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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