マルチな才能と「エロいプレー」の美学 リリー・フランキー×森重真人対談【後編】
無観客で気づかされたオーディエンスの力
――コロナ禍で観客が声を出せない状況が続いています。今、観客の存在をあらためてどう感じていますか?
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リリー 今のスポーツ観戦においては、入場制限や、様々な制約が設けられている。特にスポーツにはホームとアウェーがあって、ファン・サポーターのリアクションに支えられてきたと思います。これは森重さんにぜひ聞きたいですね、プレーにどういった影響があるのか。
森重 僕自身が感じたのは、観客の視線や、歓声があるからこそ、自分たちも高いモチベーションだったり、格好つけられたり、楽しめたりできていたということですね。歓声が沸けば、よりいいプレーだと実感できたし、ため息が聞こえてきたらより悪いプレーだったと思ってしまう。そうしたファン・サポーターと一体になった感情の揺れが、観客の前でプレーする醍醐味でした。無観客試合の時にあらためて気づかされましたが、何もない静かなスタジアムでプレーすることがどれだけ寂しいことか。モチベーションも上がらないですし、味気なく感じる。観客がいてこそだと思うし、見てくれる人たちがいて初めて自分たち選手の存在が際立っていたのだと思う。1年近く、歓声のないスタジアムでプレーしていますが、いつまでたっても今の環境には慣れないですね。
リリー そうだと思います。僕たちの仕事はライブで人に見られるのは舞台ぐらいなので。間接的に映像になったものを見てもらうか、ご自宅で本を読んでもらうことが多いです。ただ、舞台をやっていた時は、お客さんのいる難しさを感じます。ウケている、ウケていないとか、お客さんのリアクションが気になり過ぎて、お芝居にも影響が出るんです。本来は笑っていようが、泣いてようが稽古と同じことをやるべき仕事なのに。でも、人間だからそこに振り回される。だから、オーディエンスの存在はやはり大きい。何カ月もやってきたことを一気にひっくり返す力がある。実際に、観に来ているお客さんを見ると、うれしい気持ちにもなります。生身の人間を見た時のほうが、その人に応えたいという気持ちが起きるので。