「小さい頃から憧れていたクラブ」とJ1制覇への思い 福西崇史×水沼宏太対談【後編】
キャリア初のリーグ制覇へ「なんとしても自分はみんなで喜べる場所にいたい」
――事前の打ち合わせでは、あまりお二人は話をした機会がないと聞いて、驚いたのですが、水沼選手は福西さんに聞きたいことはありますか?
水沼 それこそ球際の強さが間違いなくすごかった印象があるのですが、中に入っていくタイミングがすごく良かったと思うんです。クロスに入って行って、ヘディングをズドンと決めるシーンも多かったと思いますが、これはどのタイミングで「今、行ける」と思っていたんですか?
福西 水沼選手が先ほど言っていたクロスのイメージと同じですね。「ここに一つボールが来たら」とか、「水沼選手がボールを持ったら、こういうクロスが来るな。FWが狙っているから、次にどうしようかな」と、FWの次を考えていました。その時にDFがFWを見ていたら、「これは気づかれないから、行こうかな」とか「あ、見られたからやめよう」とやっていました。マツ(松田直樹)は、その周囲のケアを良くしていましたね。マツとはよく目が合いました(笑)。
水沼 確かに、マツさんはそういうところを見ている感じがしますね。
福西 上がってくる時もそうですし、逆に僕が上がる時も「見られた」と思ってやめたり。だから、僕は2個目、3個目のイメージを持っていきました。
水沼 そういう選手も最近少ないですよね。低い位置からガッと出て行くとか。うちの選手もそれができたら、もっと点が入ると思うんです。センターフォワードとウイングだけでは、中の枚数が足りません。僕からしたら福西さんのように、後ろからビュッと出てくる選手がいたらありがたいですね。
福西 クロスを上げる選手にとっては、もう一つ選択肢ができることになりますからね。扇原(貴宏)選手とか、さばいた後に状況を見てスッと上がってくるタイミングをつかめば、F・マリノスの外の攻撃と中の攻撃が増えそうですね。
水沼 そうなんです。クロスを上げる側なので、そういうプレーはすごく目についていたんですよね。すごく印象に残っています。
福西 ありがとうございます。僕は、ボールをもらってナンボの選手だったので、ボールを持っている人に「出してくれよ!」「気づいてくれよ!」と念を送りながら、上がっていました。声は出さなかったんですよ。「おーい!」っていうよりも、こそっと手を挙げて、「見るかな、見ないかな」と、それでずっと生きてきました(笑)。今後、伝えていったほうがいいかもしれないですね(笑)。
水沼 本当に来てください(笑)。
福西 そうしたら、またアシストも増えると思いますよ。
水沼 そうなんですよ(笑)!
――この取材時点で残り10試合あります。開幕直後、川崎フロンターレが独走しましたが、ここにきて勝ち点差が詰まり、優勝争いができる状況になりました。残りの試合でどんな戦いをしたいですか。個人的な目標を含めて教えてください。
水沼 チームの目標は、シーズン当初と変わりません。僕らはとにかくずっと勝ち続けないと、上に行くことはありません。目の前の試合を全力で戦うことは間違いなく大事になります。まだ(優勝争いを)意識するのは、早いかなと思っているので、残り5試合から3試合くらいまでは、何も意識せず、自分たちは勝ち続けることをしていれば何かが起こると思っていますし、選手もそれを信じていると思います。結構、チームのみんなの感じは、あまり(結果が出ていることを)口に出していなくて、いつの間にかここまで来たねっていう感じです。「絶対に行ってやるぞ」というギラギラした感じというより、とにかく1試合1試合「次勝とう」「次勝とう」となっていて、僕としては、それが良い感じなのかなと思っています。とにかく最後にチームみんなで笑ってシーズンを終えられるように頑張りたいです。
2年前の優勝の時には僕はいなかったので、なんとしても自分はみんなで喜べる場所にいたいなと思っていますし、このクラブでそれができれば、小さい頃から憧れていたクラブなので自分にとっても人生においてすごい財産になると思います。ルヴァンカップと天皇杯は取っているので、あと一ついきたいです。そのためにも僕のできることを全力でやらないといけませんし、与えられた仕事を全うできるように、常に良い準備をして、怪我なくやっていきたいと思います。
福西 勢いとしては、行きそうな勢いがありますよね。
水沼 そうですね。それこそ残りの毎月ベストアグレッシブプレーヤーはF・マリノスから選ばれるようにしないといけないと思っています。
福西 チームの調子が良くなくても、アグレッシブな選手はいるんですが、「アグレッシブだけど、チームが1勝もしていないな」とか、そういうところもあるのでね。そこは葛藤のところです。チームの調子が良くて、チームの結果につながっているというのが、この賞なので、今回はお待たせしましたが、選出できて良かったです。
水沼 ありがとうございました。うれしいです! また、これからも頑張ります!
[プロフィール]
福西崇史/1976年9月1日生まれ、愛媛県出身。95年にFWとしてジュビロ磐田に加入すると、プロ入り後にボランチへコンバートされ黄金時代を迎えたチームの中盤を支えた。J1通算349試合62得点の成績を残し、Jリーグベストイレブンも4度受賞。日本代表としても国際Aマッチ64試合7得点を記録し、2002年日韓大会、06年ドイツ大会とワールドカップに2度出場した。04年アジアカップでは優勝を経験している。