「レッズがいたから頑張れた」 元Jリーガーが貫く“浦和愛”、儚かった2年間のプロ生活

アカデミーの試合を観戦する渡辺隆正ダイレクター【写真:Ⓒ浦和レッズ】
アカデミーの試合を観戦する渡辺隆正ダイレクター【写真:Ⓒ浦和レッズ】

【元プロサッカー選手の転身録】渡辺隆正(元浦和)前編:県立浦和高校サッカー部が生んだプロ選手第一号として加入

 世界屈指の人気スポーツであるサッカーでプロまでたどり着く人間はほんのひと握り。その弱肉強食の世界で誰もが羨む成功を手にする者もいれば、早々とスパイクを脱ぐ者もいる。サッカーに人生をかけ、懸命に戦い続けた彼らは引退後に何を思うのか。「Football ZONE web」では元プロサッカー選手たちに焦点を当て、その第2の人生を追った。
 
 今回の「転身録」は2001年から2年間、浦和レッズに在籍した渡辺隆正(44歳)だ。地元の県立浦和高校から筑波大学を経て、夢だった浦和の一員となるも、強豪クラブへの階段を駆け上がる当時のチームで出場機会を掴めず、わずか2年でプロの世界に別れを告げた。現役引退後は浦和ハートフルクラブのコーチとして育成指導者としてのキャリアを積むと、FC今治を経て、2020年から浦和の下部組織を統括するアカデミーダイレクターに就任。前編では浦和入りを夢見た日々と、短く儚かった2年間のプロキャリアを振り返る。(取材・文=河野正)

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 浦和レッズが初めてブラジル人による指導体制を試みた2001年、年頭の新加入選手は9人だった。

 ジュビロ磐田から獲得した井原正巳をはじめ、トゥットら3人のブラジル人のほか、山岸範宏、西村卓朗、渡辺隆正、田中達也、岩本隼児という5人の新人が加わった。このうち筑波大学の渡辺は埼玉県きっての進学校、県立浦和高校サッカー部が生んだプロ選手第一号である。

 1月28日に行われたファン感謝祭の合間に新人の加入会見があり、身長164センチの渡辺はディエゴ・マラドーナとローター・マテウス、森島寛晃の名前を挙げながら、こんなふうに抱負を述べた。

「自分も小さい体だが、大きなプレーで子どもたちに夢を与えたい。トップ下からスペースに飛び込み、パス出しとゴールを奪うのが持ち味です。早く(大学の先輩である)井原さんと同じピッチに立ちたい」

 それから28日後の2月25日、浦和駒場スタジアムでロサンゼルス・ギャラクシー(米MLS)との国際親善試合が行われ、渡辺は後半開始から右の2列目で出場。中央DFでフル出場した井原との共闘を早くも実現させた。「勝つために必死だったので感慨に浸ることはなかったが、駒場が特別なスタジアムになった瞬間でした」と懐かしむ。 

 ベンチには入れなかったが、名古屋グランパスとの敵地での開幕戦にも帯同するなど、1年生でレギュラーになった高校、大学時代のようにプロの世界でも前途有望と思われた。

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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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