チームビルディングの専門家と見る日本代表の“組織としての完成度” ジャイアントキリングを起こすチームを作るには
チームの成長には1つの法則がある
ブラジル・ワールドカップ(W杯)に臨んだ日本代表は、果たして世界に通用するレベルだったのか。
本田圭佑が再三訴えてきた個の力や、アルベルト・ザッケローニ監督が築き上げた戦術、メンバー選考や大会直前のコンディション管理、相手チームの分析など、勝敗に影響する要素を挙げればきりがない。
そんな中、最重要ポイントを挙げるならば、“組織の完成度”だろう。組織として成熟していなければ、どんなに個が強く、どんなに高レベルの戦術を用いても、厳しい大会を勝ち抜くことは難しい。
今回、チームビルディングの専門家である楽天大学の仲山進也学長と共に、日本代表の組織について検証を試みた。ベンチャー企業だった楽天の現在までの過程をもとに、組織の成長理論を体系化した仲山氏は、ヴィッセル神戸の経営に参画した経験を持つ。仲山氏の著作である「ジャイアントキリング」理論についての視点から、ザッケローニ体制の組織としての成長度を探った。
――最初に「組織」を語る上での前提を教えて下さい。
「“グループ”が成長して“チーム”になる、という視点で考えます。グループのままでは格上のグループには勝てず、チームになって初めてジャイアントキリングが起こせます」
――どんな過程を経るのですか。
「チームの成長には1つの法則があります。イモムシからサナギになり、チョウになるイメージです。イモムシはゆっくり動けますが、同じイモムシなら大きい方が速い。それがサナギになると動けなくなり、脱皮してチョウになると大きなイモムシにも勝てるようになる。
これを4つのステージで捉えます。第一ステージがフォーミング(形成期)。一時的な混乱状態となり、パフォーマンスが下がる第二ステージのストーミング(混乱期)を経て、自分たちのルールができるノーミング(規範期)という第三ステージに至る。第四ステージは、あうんの呼吸で1つの生き物のようになる究極の状態。これをトランスフォーミング(変態期)と呼びます」
――それぞれの段階でどういう状態になり、何をきっかけに先へと進むのでしょう。
「フォーミングは、初めましての状態。互いのことも何をしていいかも分からないから、空気を読みつつリーダーに言われたことをやります。コミュニケーション量が増えて相互理解が進み、『これを言っても大丈夫かな?』の壁を越えると、皆が自分の考えを場に出せるようになる。
そうしてストーミングになると対立・衝突の嵐(storm)が起こり、感情的にもモヤモヤしやすくなる。『このままじゃらちが明かない』という壁を越えるべく、場に出た意見をすり合わせ、こういうふうにやろうと自分たちのルールが決まるのがノーミング(normは規範の意)です。
するとメンバーの口から、『自分たちのやり方』や『ウチのチーム』という表現が出るようになります。ここで初めてグループがチームになり、フォーミング時のベストパフォーマンスよりも高いパフォーマンスが発揮できるようになる。ノーミングでは、理想も現実もやるべきことも全員で共有されているので、例えば誰かは優勝を狙い、別の誰かは今のままでは勝てないと思っているようなことはありません」