PSGの「MNMトリオ」初陣で不発 “メッシ・システム”構築へ、注目ポイントは?
【識者コラム】CLクラブ・ブルージュ戦で初の3人揃い踏みも機能せず
リオネル・メッシ、ネイマール、キリアン・ムバッペの3人が先発したパリ・サンジェルマン(PSG)が、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)初戦でクラブ・ブルージュと引き分けている(1-1)。初の3人揃い踏みで注目されたが、コンビネーションもチームとしてこの3人をどう機能させていくかも「まだまだ」という段階のようだった。
並び方は右にメッシ、センターフォワード(CF)にムバッペ、左がネイマールでスタートしている。メッシの右、ネイマールの左は2人のオリジナルポジションでもあり、バルセロナ時代もこうだった。バルサでは中央にルイス・スアレス(現アトレティコ・マドリード)がいて、無双の南米3トップでリーグ、カップ、CLと主要タイトルを総ナメにしている。パリのファンはその再現に期待しただろうが、ブルージュ戦は不発に終わったわけだ。
3人が揃ったのはこの試合が初。まあ、そう多くを望むほうが無理だ。スアレスが加入したばかりのバルサでも、スアレスを右、メッシをセンターに使って不発だったという記憶がある。これからいろいろ調整していくのだと思う。ただ、マウリシオ・ポチェッティーノ監督が言うように「時間は限られている」のも事実だ。
PSGのいるグループAはマンチェスター・シティ、RBライプツィヒがいて、クラブ・ブルージュもけっこうな曲者だと分かった。“MNM”でCL優勝! と思っていたら、グループステージであえなく敗退ということもありそうである。
メッシ、ネイマール、ムバッペのトリオを機能させるには、まず“メッシ・システム”をどう構築するかだ。
バルサのMSNの時は、当初は3人の守備負担が等分だった。しかし、まもなくスアレスとメッシが前残りして、ネイマールがMFの守備ラインに入る形に落ち着いた。さらに1人守備を助ける必要があれば、メッシではなくスアレスが引く。メッシ最優先というのがバルサの方針だった。ブルージュ戦では、早速ネイマールがバルサ時代の役割をやっていたが、ムバッペとメッシの関係はよく分からなかった。とりあえずムバッペを前残りさせてメッシが引いているようで、カウンターアタックでムバッペのスピードを生かすことを考えたら、これがたぶん正解だと思う。
メッシをサイドから中央へ移動させるために必要な右サイドの幅取りは、右サイドバックのアクラフ・ハキミがやることになる。その際に2人を支える右インサイドハーフが、“メッシ・システム”のキーマンになりそうだ。アンデル・エレーラ、レアンドロ・パレデス、マルコ・ヴェラッティなど、けっこう適性のあるMFは多いので、まあこれもそんなに大きな問題ではなさそうである。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。