群馬新人GKが熱いワケ 観る者の心を打つ“魂の鼓舞”の原点、その先に見据える恩返し

実直な受け答えとともに、言葉の端々に熱い思いがうかがえた【写真:©THESPA】
実直な受け答えとともに、言葉の端々に熱い思いがうかがえた【写真:©THESPA】

公式戦出場なしでも仲間を鼓舞する理由「しおらしくなるのは自分的に負け」

 そんな山田も、プロになって公式戦出場はまだなく、ベンチ入りも2試合のみ。J1リーグ出場経験があるベテランの清水慶記、地域リーグからJFL、Jリーグ全カテゴリーの所属歴を持つ松原修平の牙城を崩せずにいる。GKは1人しか試合に出られない過酷なポジションで、ピッチに立てない悔しさも当然あるが、声掛けは山田の戦い続ける意思の表れでもある。

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「清水選手はクロスへの守備が非常に素晴らしいし、松原選手はステップが巧みでシュートストップの範囲が広くて、盗むべきところがたくさんあります。自分はささやかな選手なので、感情に捉われていると目指すべきところにはたどり着けないと思っています。試合に出るなら、勝つためにやるべきことを全力でやるだけ。試合に出ないなら、出ないなりに、その時に成すべきことを成すだけです。単純に負けず嫌いなので、環境や立ち位置に負けて、しおらしくなることも自分的には負け。だから、自分は戦い続けます」

 山田は負けず嫌いである一方で、自らを「弱い」とも表現する。早稲田大で3年生までは試合に出られずに悔しい思いをし、「サッカー人生ラストかもしれない」と意気込んで臨んだ2020年度のシーズンも、コロナ禍による2度の開幕延期で「やっても意味がないんじゃないか」と心が折れかけたこともあった。それでも、多くのサポートを受けて克服。関東大学サッカーリーグ戦1部全22試合にスタメン出場し、リーグ2位の21失点と輝きを放った。

 当時の経験が、プロとなって最初の試練に直面している山田の原動力にもなっている。

「今まで、多くの人に支えてもらってここまで来ました。少しでも名を広めたり、頑張っている姿を見てもらって恩返しがしたいし、子どもの頃にサッカー選手に憧れたように、次は自分がそういうふうな立ち位置になりたい。ぜひ、自分の一生懸命さを見てほしいです!」

 サッカー選手・山田晃士をひと言で表すなら――。その質問に山田は少し考えると、「『ウサギとカメ』の亀です」と答え、言葉を続けた。

「ただ、あの話と違うのは、たくさんのサポートを受けている亀です。1人ではうさぎには絶対勝てないし、この舞台にすら来ることはできませんでした。足の遅い亀ですが、多くの方とのつながりがきっと目指すべきところに連れて行ってくれていると思っています」

 1人のGKとしてピッチに立てる日を信じて、山田はハードなトレーニングをこなし、仲間に熱いゲキを飛ばし続ける。

[PROFILE]
山田晃士(やまだ・こうじ)/1998年12月31日生まれ、東京都出身。浦和レッズユース―早稲田大―群馬。最後尾からのコーチングで守備陣を統率し、精度の高いキックで攻撃の起点にもなれる熱血GK。支えてくれた人々へ恩返しすべく、見る者の心を動かす全力プレーを誓う。

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