「高度な技だった」 鹿島DF犬飼を栗原氏が絶賛、“得点力向上”の要因とは?

成長過程にある犬飼に栗原氏も期待「代表だってまだまだ可能性はある」

 サッカー界のトレンドもあり、近年では本職以外の選手がセンターバックを務めることも多くなった。そんななか栗原氏は「エスパルスにいた頃から犬飼選手はずっとセンターバックをやってきている」と注目していたという。

「エスパルスでは不動のレギュラーってわけではなかったと思うけど、鹿島に移籍して確実にステップアップしている。移籍した当初も昌子(源)選手や外国籍選手がいて、レギュラーってわけではなかったと記憶しています。でも、もともとポテンシャルが高い選手。昌子選手を始め、いいお手本がいる環境でトレーニングや試合を通して力強い守備力を身に付けて、さらにレベルアップしたんじゃないかなと感じました」

 昨年までJ1通算5ゴールだった犬飼選手は、今季8月までですでに5ゴールを決めている。センターバックが急に得点力が上がるものだろうか。それについて栗原氏は、味方の信頼度が増したことを指摘した。

「ゴールのコツを掴めるようになったというのもあるだろうけど、相手にまずは競り勝つ、そしてゴールを決めることで味方のキッカーからの信頼度が増したことが大きいのかなと思います。ボールを入れてくる回数が増えることで、例えば5本よりも10本ボールが入ってくるほうがゴールに結びつく回数も増える。そしてそれをきっちりと決めているからこそ、ゴールも増えているんじゃないかなと思います」

 8月の鹿島は第27節で、好調を維持していた横浜F・マリノスに14試合ぶりに黒星を付けることに成功した。「鹿島はもともとF・マリノスとは相性がいい。得意意識があるのかもしれない」と栗原氏は現役時代の体験を踏まえたうえで、「犬飼選手は相方の町田浩樹選手と安定して上手く守っていた印象で、危ないシーンはほとんどなかったんじゃないかな」と評価した。

「F・マリノスはいつもチャンスを作るシーンが多いけど、鹿島戦ではチャンスらしいシーンを作らせてもらえなかった。そういう意味では事前に鹿島がチャンスの芽をきちんと摘んでいるわけで、全体的に守備の意識が高かったのかなと思います。犬飼選手もいつもならゴール前での攻防や相手FWとの1対1といった体を張ったシーンが見られるけど、この試合では守備を統率して相手にチャンスを作らせない、チャンスの芽を摘むような試合運びをしていた印象でした」

 今年28歳になった犬飼。「もともとポテンシャルが高い」と目をつけていた栗原氏にとって、鹿島でのこの成長にはさらなる期待を抱かせるようだ。

「今のように良いパフォーマンスを続けていけば、年齢的に日本代表だってまだまだ可能性はある。代表に1回でも入ったりすれば、さらにワンランクアップするような選手だと思っています。どう考えたって代表スタッフ陣は注目しているはずなので、鹿島で結果を出して、なんとか代表に選ばれて、またさらにパワフルなセットプレーや高い守備力、堅実なディフェンスを見せてほしいですね」

 9月5日のルヴァンカップで左ハムストリング筋損傷の怪我を負った犬飼だが、さらに大きく成長してピッチに帰ってきてくれるはずだ。栗原氏の期待もさることながら、ファン・サポーターがその雄姿を待っている。

[プロフィール]
栗原勇蔵/1983年9月18日生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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