清水の元主将、なぜ伝統工芸の世界へ? サッカー界を離れることに「迷いはなかった」
資料を作成し、企業、学校などに営業…「目標は日本一」
そして、清水を今年3月末で退職し、4月1日付けで創造舎に入社。創造舎は同日付で正式に「匠宿」の指定管理業務を担う会社となり、杉山は5月8日のリニューアルオープンに向けてフル回転で働き出した。
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「それまでにエントランスを作るところから始まりました。社長をはじめ、主要スタッフは凄い人たちばかりで、全員が40代前半で静岡県出身です。例えば、染めの工房長は『お茶染め』を専門にしています。製造工程で出る商品にならない部分の茶葉を染料として使用し、使い終わった茶葉は堆肥(たいひ)として循環させる手法です。そうした物づくりの説明を聞きながら、伝統工芸に手先、指先で触れ、カフェでゆっくりと飲食もできる。そんな施設が静岡市にあることを広めるのが僕の役割です」
清水エスパルス営業部員の時に避けていた地元メディアへの露出にも積極的になり、自作の提案資料を手に、企業、団体、教育委員会、学校などに営業を掛けている。
「資料はパワポで作りました。すでに企業の新人研修、修学旅行にも使っていただいています。目標は、匠宿を日本一の伝統工芸施設にすることです。そして、同じ丸子泉ケ谷の皆さんと一緒に地区を盛り上げ、静岡の子供たちにとって、匠宿が伝統工芸におけるファーストコンタクトの場になるようにもしていきたいです」
土日は仕事。今は愛する清水の試合をライブで見ることはないが、DAZNでのハイライトは欠かさず見ているという。目がいくのは、杉山から背番号「6」を引き継いだ竹内涼だ。
「タケは気になりますね。彼は新人の頃から、チームの雰囲気が悪くなると、ポンと締める言葉を出していました。当時から『将来はキャプテンをやる男』と思っていたので、『タケ、俺の良いところも悪いところも見ておけ』と伝えていて、引退時には『6番、付けてくれないか』とお願いもしました。今は予想通り、彼がキャプテンなので、チームのことはそれほど心配していませんが、個人的に話す時は『引退後、クラブで働くのなら営業を経験したほうがいい』と伝えています」
最後に「将来、サッカー界に戻ることは考えないのか」と問うと、杉山は「拒絶はないですが、今はそういう思いはないですね」と返した。清水を愛し、愛された闘将は、これからもピッチから離れた場所で輝き続ける。(文中敬称略)