激震の東京V、監督交代で何が変わった? 初陣で見えた前体制の遺産と“勝負師”采配
後半のベンチワーク、攻撃姿勢には勝負師としての大胆さがよく表れている
後半開始早々に1点を失った大宮が「3点目を取りに行くより、耐えてしのいでカウンターを狙う」(霜田正浩監督)と切り替えたこともあり、その後も東京Vは怒涛の攻撃を続けた。堀監督は後半20分にMF小池純輝とMF新井瑞希、同32分にFW佐藤凌我とMF阿野真拓と攻撃の駒を次々に投入。こうしたベンチワークの早さは、前監督時代には見られなかったものだ。
同32分の交代では、それまで右ウイングだったFW山下諒也を右サイドバックに下げている。左サイドバックには山口の怪我でMF山本理仁がアンカーポジションから移動していたため、終盤は本職のDFはセンターバック(CB)の2人だけになっていた。アディショナルタイムにはDFンドカ・ボニフェイスが前線に上がり、GKマテウスがDF若狭大志と並んでCBの位置に入った。永井前監督も攻撃サッカーを標榜していたとはいえ、ここまで極端な攻撃姿勢は見せたことがなかった。
後半だけのボール支配率では東京Vが約70%を記録した。しかし、公式記録では後半の東京Vのシュートはわずか3本にすぎない。前線に送り込んだ選手たちの立ち位置や動きが整理されていないのは一目瞭然で、大宮が人数をかけて守っているところへ無理に突っ込んでは潰され、シュートまで持ち込めなかったのだ。ラストチャンス、新井のカットインからのミドルシュートはバーを叩き、その後のペナルティーエリア内の混戦で石浦が倒されるが笛は鳴らず、堀ヴェルディの初陣は勝ち点を得ることなく終わった。
試合後の堀監督は、「後半に関しては選手たちが戦ってくれた。そこは今後に生きてくると思う」と会見を結んだ。新指揮官のサッカーは正直なところよく見えなかったが、後半のベンチワーク、攻撃姿勢には勝負師としての大胆さがよく表れている。何より、お世辞にもレベルの高い試合とは言えなかったが、残留へ必死に1点を守る大宮に対し、気迫で負けず攻め続けた東京Vの戦いは、終了の笛が鳴った瞬間に見ているほうもどっと疲労が押し寄せるほど力の入るものだった。
それだけの熱量を選手から絞り出せる点で、ダテに浦和レッズの監督としてアジアタイトルを取ったわけではないことは確かだ。もちろん、ユース時代から永井前監督の教え子だった山本や石浦のように、「勝利という形で永井さんに恩返しをしたい」という気持ちで戦っていた選手たちの存在が、東京Vの熱量を高めていたこともまた間違いない。