激震の東京V、監督交代で何が変わった? 初陣で見えた前体制の遺産と“勝負師”采配
【J番記者コラム】大宮戦の4日前に永井秀樹前監督が辞任、堀孝史新監督が指揮も1-2と惜敗
J2リーグ第28節、東京ヴェルディはアウェーで大宮アルディージャと戦った。7月3日の第21節から始まったアウェー8連戦の最後となる試合。ここまで4分3敗と勝ち星がなく、さらには試合4日前に永井秀樹前監督が辞任し、堀孝史新監督が初めて指揮する試合となっただけに注目を集めたが、結果は1-2の惜敗に終わった。
試合2日前のリモート会見で新指揮官は、「永井さんのサッカーは自分もコーチとして一緒にやっていて魅力的だと思っていた。継続できる部分は継続していきたい」と語っている。選手たちには「永井さんがやってきたことにプラスアルファでやっていく」と伝えたといい、トレーニングのなかでMF石浦大雅は「まだそのプラスアルファがなんなのか分からない」と率直に語っていたが、前監督時代からの中心選手であるMF佐藤優平は「攻撃面で変えなきゃいけないところがあると思う」と踏み込んだ発言をしている。
堀監督は昨季まで強化部でスカウトを担当していたが、今季からコーチとして入閣し、主に守備面を担当していた。つまり、守備に関してはこれまでをベースに、攻撃でいかに新指揮官の色を出していけるかが『堀ヴェルディ』の課題と言える。しかし石浦の発言のように、わずか数日でその色が出てくるものではない。堀監督も「まずは戦術以前に、チームがしっかりまとまって、全員が前向きな姿勢で取り組める環境、ポジティブな空気を作っていくことが大事」と語るにとどめた。
しかし、そのベースとなるはずの守備が空転し、前半で2点を失う立ち上がりとなってしまう。「なかなか最初のところでパワーを出せずに、相手に有利な状況を作ってしまった」と新指揮官が悔やんだように、厳しくプレスに行けないまま大宮に押し込まれた。前半11分に右サイドを突破されて先制を許し、同32分には突破やクロスで気を吐いて押し返す役目を果たしていたDF山口竜弥を負傷で失うと、左サイドで相手MF黒川淳史を止められなくなり、同38分に追加点を奪われた。攻撃でも大宮の連動した激しいプレスで中盤の列を越えるのもままならず、ほぼ見どころのないまま前半が終わった。
しかし後半、堀ヴェルディは前半とは打って変わった躍動を見せる。「すごくポジティブな声掛けで送り出してくれて、迷いなく後半に入れた」(MF山本理仁)というイレブンは後半3分、最終ラインから少ないタッチ数で12本のパスを回して大宮ゴール前に侵入。左サイドから右サイド、さらに中央と7人が絡み、最後に左から飛び込んだ8人目のMF杉本竜士がフィニッシュした美しい崩しは、いわば『永井ヴェルディ』の価値を証明するゴールと言っていい。