J1残留へ、横浜FCが直近5戦で“V字回復” 新加入の独五輪代表GKが生む守備の安定

横浜FCのGKスベンド・ブローダーセン【写真:Getty Images】
横浜FCのGKスベンド・ブローダーセン【写真:Getty Images】

【J番記者コラム】直近5試合で2勝1分2敗、1試合平均失点「1.2」と守備が劇的に改善

 J1リーグ第27節、横浜FCは敵地・三協フロンティア柏スタジアムで柏レイソルと戦い、1-2で敗れた。これでリーグ戦再開から名古屋グランパス、ベガルタ仙台、セレッソ大阪、ガンバ大阪、柏と5試合を終えて2勝1分2敗。1試合平均で勝ち点「1.4」を挙げている。中断前の22試合で2勝5分15敗。1試合平均勝ち点がわずか「0.5」だったことを考えればV字回復と言っていい。

 その要因には、まず守備の安定が挙げられる。5試合での失点数は「6」で、1試合平均は「1.2」。前半戦では22試合で51失点だったのだから、こちらも劇的な変化だ。中断期間に重点的に取り組んだ組織的な守備の改善、さらには夏の移籍ウインドーで獲得したGKスベンド・ブローダーセンと、センターバックのDFガブリエウの活躍によるところが大きい。

 特にこの5試合のMVPと言えるのが、ブローダーセンだ。ハンブルクに生まれ地元のザンクト・パウリでプレーしていた24歳は、U-24ドイツ代表の一員として来日し、東京五輪での試合出場こそなかったものの、新天地でその実力を遺憾なく発揮している。名古屋戦では相手の唯一の決定機となったループ気味のミドルシュートを枠外に弾き、仙台戦では3度の決定機を止めてFW赤﨑秀平に「相手のGKは凄かった」と言わしめた。セットプレーの2失点を含め3失点を喫したC大阪戦でも決定機を2度は防いでいるし、G大阪戦では2-1のリードで迎えた後半アディショナルタイムにビッグセーブでチームを救い、その後のMF安永玲央のダメ押し弾につなげている。

 そして柏戦でも前半20分に相手FWクリスティアーノがニアのコースに向けて放ったシュートを、素晴らしい反応でストップ。このプレーで阻まれたストライカーの脳裏に「このGKはアジリティーがある」という印象が刷り込まれたことが、同点で迎えた同42分、柏のPK失敗につながる。キッカーのクリスティアーノは「高めのボールを蹴ったら止められてしまう」と思った。「グラウンダーなら反応されても届かない」。そう考えて、「練習とは違う蹴り方に、直前で変えた」。それが名手の足元をわずかに狂わせた。ブローダーセンも見事にコースに反応する。ボールはその指の先を越えて、ポストをかすめて看板にぶち当たり、横浜FCはひとまずピンチを回避した。

 後半、そのPK失敗を帳消しにして余りある、目の覚めるような弾丸ゴラッソを叩き込んだクリスティアーノはさすがだったが、対照的に横浜FCはボールを奪って攻め込んでもフィニッシュになかなか結びつけられなかった。攻撃で選手たちが同じ絵を描けていた柏に比べ、「サイドから行くのか中央から行くのか、人数をかけて厚みのある攻撃ができなかった」(FW渡邉千真)点は、今後の重要な課題になっていく。

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