「自滅した」清水、6戦未勝利に見えた“積極補強”のジレンマ 攻守に足りない“積み重ね”
【J番記者コラム】鹿島に0-4で完敗、「攻守で主導権を握るサッカー」とはほど遠い内容
清水エスパルスにとって夏休み最後のホームゲームとなったJ1リーグ第26節の鹿島アントラーズ戦。日中は35.9度と猛暑日となり、今年2番目の暑さとなったIAIスタジアム日本平がある清水区の暑さは、日が落ちたキックオフ時刻になっても湿度74%と蒸し暑さが残り、来場者に配布されたうちわがスタンドで活躍していた。
鹿島とは開幕戦で対戦し、3-1とアウェーゲームで9年ぶりの勝利を収め、最高の「新生エスパルス」のスタートを切ったが、2度目の対戦は前節ヴィッセル神戸に敗戦(0-1)し、3位サガン鳥栖を勝ち点「3」差で追う6位鹿島と、降格圏の17位湘南ベルマーレに勝ち点「3」差と迫られ、直近5試合勝ちなしの清水という、状況こそ大きく異なるが、お互いに負けられない試合となっていた。
立ち上がりの鹿島は、MF遠藤康が話したように「久々にやるメンバーもいたので上手くやれていない時間帯があった」とパスがズレる場面も多く、そこまで調子が良くなかった。だが相手のハイプレスから先制点を奪われた清水は、さらにミスから失点を重ね今季ワーストの4失点を喫して完敗した。「明確に彼らが上回った試合。多くのことをコメントする必要のない試合」とは、ベンチで頭を抱えたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督。そして、DF原輝綺が「自分たちで自滅した試合だった」と振り返る言葉通りの試合内容となった。ただ、抜け目なく得点機を見逃さずに決め切る鹿島の「決定力」に、清水とのチーム力の差を感じた試合でもあった。
今オフ同様、積極的にこの夏の補強に動き、フラメンゴ(ブラジル)からMFホナウド、チューリヒ(スイス)のコソボ代表MFベンジャミン・コロリの外国籍選手を獲得。国内からはJ2東京ヴェルディ時代にロティーナ監督の下でプレーしたDF井林章をサンフレッチェ広島から、サガン鳥栖からはチームの心臓とまで言われていたMF松岡大起、そして移籍期限間際にはヴィッセル神戸からFW藤本憲明を獲得。この試合ではその5人の新戦力全員がメンバー入りし、藤本以外は先発に名を連ねていたことで、サポーターの期待は膨らんでいた。しかし、実際に蓋を開けてみればシュート7本に抑えられ、決定的チャンスも少ない展開の大敗に、選手もサポーターもストレスの溜まる試合となった。
26試合を経過しても結果が出ず、目指している「攻守で主導権を握るサッカー」とはほど遠い内容に対して、試合後の会見で原は「『サッカー選手を何年やってんだ』って話ですけど」と苦しい胸中を吐露した。自分を含めて個々の選手がもっと自分で判断して、プレーしなければいけないということを言いたかったと思うのだが……。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。