忘れられない衝撃のワンプレー「ゴム製なのに“バチン!”って」 栗原勇蔵×昌子源対談【後編】

「1対1が10個ある」日本とフランスのサッカーの捉え方の違い

栗原 自分も「すごい選手が出てきたな」と思って見ていたんだよ。あまり年下の同じポジションの選手で、それまですごいと思う選手はいなかったので、海外に行ったのは必然だったなと思っていたんだ。実際にフランスでプレーしてみて、Jリーグとは何が違ったの?

昌子 日本ではGKを抜きにしたら、サッカーは10対10でやるという捉え方だと思うんですけど、フランスは1対1が10個あるという考え方なんです。だから抜かれたら抜かれた選手のせいで、抜かれてもカバーがいなかったりするので、チャレンジ&カバーという日本の教え方に反しているんです。抜かれたらカバーなんていない、抜かれたらお前のせい、という感じでした。僕はフランスに行ってすぐに試合に出させてもらって、そこからシーズンが終わるまで20試合すべての試合に出させてもらったんですが、後半になるにつれて、相手の特徴が分かってきて対応できる部分も増えてきましたけど、フランス(トゥールーズ)に行ったばかりの頃は全く相手選手を抑えられなかったですね。

栗原 フランスにはとんでもない選手たちがいましたもんね。

昌子 確かにパワーとスピードはすごいですけど、足下やテクニックは絶対に日本人のほうが上手いです。ただやっぱり単純なパワーとかは、日本人が勝つのは難しいかなと思いますけど。

栗原 そうだよね。日本では有名じゃない選手でも、すごい選手がいっぱいいるからね。

昌子 フランスはアフリカ系の選手が多くて、各チーム、ワントップを張るような選手は190cm超えのアフリカ系の屈強な選手が多いので、日本では体験できないような選手たちと毎試合対峙していましたね。

栗原 それを経験して、Jリーグに戻ってきたら、楽というか、全然違うなっていう感覚はあったの?

昌子 1対1は感覚的にはもがいて取るというよりは、こっちが主導権を握って取れることが多いかなって感じましたね。フランスでは相手が何をしてくるか分からないし、単純にバーンって前にボールを蹴ってヨーイドンでも勝てないので、全部がリアクションで守っていたなと思うんです。でも、ディフェンスって基本的にすべてがリアクションじゃないですか。相手のフェイントに付いていく。でも僕はどっちかっていうと、自分からアクションを仕掛けてボールを取ったりもするので、そういうのは日本のほうが守りやすいなと感じます。

栗原 1回のミスで絶対に取り返しがつかないフランスと、自分からチャレンジしてもまだそこから2回3回とチャレンジできる日本との違いってわけだね。でも、すごい経験をしてきたと思うし、ここからまだまだ自分の中では成長して、鹿島時代のパフォーマンスに戻らなくちゃいけないと思うし、期待しています。

昌子 僕自身も自分の上限が下がったとは思っていないので、そこにまた自分が近づいていかないといけないと思っています。フランスも怪我で後半の半年ぐらいはプレーしていないので、結局は1年しかやっていないんですけど、それでもフランスに行かないと分からないこともたくさんありました。1年ですけど、自分のサッカー人生にとってすごくプラスになっているんです。帰国して昨年末に右足のオペをしたので、そういう意味では今シーズンはパフォーマンスも上がってきているし、足首もリバウンドが今のところは出ていないので、あとはもう自分対自分なのかなと考えています。

栗原 いやあ、それを聞いてさらに楽しみになりました。

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