久保建英、マジョルカ“復帰”実現の背景 「1部残留の主役」へ、いばらの道を進む覚悟
指揮官は起用を前提に獲得「彼は大いに我々を助けてくれる」
地元情報によれば、マジョルカは保有元のレアルに対しレンタル料は支払わず、選手年俸のみを負担するという。昨季ビジャレアルが支払ったレンタル料と選手年俸の二重負担を免れたことになる。
久保はレアルでのプレーを第一希望とし、それが叶わないのならマジョルカへ転出を希望していたとされるが、マジョルカ以外の有力クラブが本気で久保を獲りにかかり好条件を提示していれば、コロナ禍で例年とは全く違う経済状況のなかで、悲願のフランス代表FWキリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)獲得へ向けていくら資金があっても困らないレアルが、売却を含め選手を現金化の道具にしていた可能性だってあった。「本人が希望しているから」という単純な理由だけで、去就が決まるような悠長なことは言っていられなかったかもしれない。
マジョルカが、レアル・ソシエダなどチーム力やクラブ組織で格上候補との獲得戦線を制して久保を獲得した一番の理由は、安定した出場機会が見込める点だ。
チームは昨季2部で、一番と言って良いほどの安定感のあるチームだった。とはいえ、1部で戦うには当然のことながら戦力の上積みが必要になる。
ルイス・ガルシア・プラサ監督は、攻撃陣の補強がFWアンヘル(←ヘタフェ)だけにとどまっていた状況で、選手補強について「少なくともあと2人は必要」と訴えていた。その1人が久保なのだ。2年前のレンタルでは、レアルがマジョルカに対し出場試合数の下限を設定していたとの噂もあったが、今回はこういった要望(強制)の必要はない。受け入れ側が選手の実力を認め、起用を前提に考えているのだから。
同監督は記者会見で、久保の起用方法について「4-2-3-1の2列目ならどこでも使える。突破、ラストパス、ゴールを期待する。当面はサイド。彼は大いに我々を助けてくれると思う」と期待をかけている。他のシステムのバリエーションとしては4-3-3、4-4-1-1が考えられるが、この場合はともにサイドで攻撃の起点、またはドリブルでの突破を求められるだろう。
島田 徹
1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。