4戦未勝利の清水と「決定力」の低さ 形が見えない攻撃…新戦力は“突破口”になるか

守備の戦術に引っ張られない創造性あるプレーが今の清水には必要

 しかし、ただ個人の決定力だけに頼るのでは厳しいものがある。やはりチャンスのなかでも、「決定的」と言えるチャンスをどれだけチームとして多く作り出せるのかがポイントだと思っている。もちろん、ロティーナ監督も「チャンスをより増やしていくことが一番重要。そのために攻撃でやるべきことはたくさんあり、より相手を押し込む必要、よりエリアの中で存在感を出していくことが必要」と話している。

「決定力を高めるためには?」という質問には、「練習から緊張感があるなかでゲームだったり、そのシュート練習だったりというところで磨いていくしかない」と河井。途中出場で後半24分に西澤のクロスから決定的チャンスを決め切れなかったMF中山克広は、「試合の緊張感と同じような雰囲気のなかで練習ができれば、同じシーンが来た時に落ち着いて決めることができる」と話した。

 これだけ聞くと「清水の練習は温いのか?」と思われてしまうかもしれないが、ロティーナ監督の就任後もコロナ禍のため満足に練習を見ることはできていないものの、決してそんなことはないだろう。併せて河井は「どこからでも点が獲れるように。FWの選手だけの責任ではないので、みんなが良いボールを供給してFWの選手が決めやすいようにすることも大事」とチームとしての決定力アップを強調していた。

 失点シーンではシュートに対する寄せの甘さが気になるが、食い付くことを嫌う戦術のなか、その判断は難しいと思うが失点数は確実に近年に比べて減っている。あとはなかなか形が見えてこない攻撃をどう活性化させるかということだが……新外国籍選手や神戸から期限付き移籍で獲得したFW藤本憲明らの新加入選手、また怪我から復帰する選手などに期待したいところだ。まずは攻撃時の選手同士の距離感とボールを積極的に受けるポジショニング。そしてダイレクトや1タッチでのパス回しなど、あまり守備の戦術に引っ張られない創造性があるプレーも今の清水には必要だと感じている。

 静岡市も8月8日から新型コロナウイルス感染拡大の影響により、まん延防止等重点措置の対象区域となった関係から、IAIスタジアム日本平の観客も午後9時までに退場しなければならず、試合終了後の選手たちの場内挨拶もこの試合から中止となった。次のホームゲームも同様の状況であれば試合終了と同時に退場しなければならないが、それでもチームの後押しに訪れるサポーターのためにも、勝利の余韻を持ち帰ることができるように全力を尽くして戦ってくれることを期待している。

(Sの極み・下舘浩久 / Hirohisa Shimodate)

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下舘浩久

しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。

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