積極補強の清水、巻き返しなるか “20歳”新加入MFの輝きと“既存戦力”が放つ意地
意地を見せた西澤と後藤、新外国籍選手へ“宣戦布告”
試合は前半4分に、今シーズン初先発となったMF滝裕太のFKからファーサイドでFWチアゴ・サンタナが頭で折り返し、MF片山瑛一が押し込んで先制。しかし、その後は圧倒的に横浜FMにゲームを支配され、ボールを奪ってもすぐにロストしてしまう展開となったが、GK権田修一やDFヴァウドをはじめ全員が体を張ってゴールを守っていた。
それでも前半だけで14本のシュートを浴びせられ、同39分には相手DFティーラトンからのクロスをファーでFW仲川輝人に右足アウトサイドで中へ折り返されてMFマルコス・ジュニオールが押し込むという、セットプレーとの違いはあるものの清水の先制点と同じような形で同点に追いつかれてしまう。
後半2分には横浜FMにパスをつながれてペナルティーエリア内まで侵入され、DF小池龍太の落としたボールからFWエウベルのグラウンダーのシュートが井林の左足に当たってコースが変わり、ゴールを奪われ逆転を許した。ロティーナ監督は後半5分に一気に3枚替えをして両サイドハーフをMF西澤健太とFW後藤優介に変更。センターバックをヴァウドからDF立田悠悟に代えて試合の流れを動かした。
そして、同15分に決して横浜FMのように流れるようなパス回しではないが、必死にボールをつないでチャンスを窺い、片山が前線のサンタナへロングボールを入れる。そのこぼれ球を後藤が粘って拾い、そのボールをサンタナがスペースへ走る後藤へパス。後藤の折り返しにフリーで待ち構えた西澤が、渾身のヘディングシュートを放った。GK高丘陽平が一度はボールを弾くが、魂のこもったシュートを防ぎきれず、西澤の今シーズン初ゴールで今度は清水が追いついた。
昨シーズンは西澤が34試合2419分、後藤が30試合2161分に出場しチームを引っ張っていたが、今シーズンはここまで西澤は13試合473分、後藤も13試合402分とロティーナ新監督の戦術と大型補強により出番は激減していた。それでも2人は腐らずに練習では常に明るくムードメーカーとなりチームを盛り上げていた。しかし、この夏の移籍期間で同じポジションに新外国籍選手を補強され、さらに状況は厳しくなったが、その2人が絡んでの同点ゴールは「簡単にポジションを渡さない」との「宣戦布告」だったのだろう。今後のチーム内競争の激化を予感させるゴールでもあった。
その後は後半36分にMF竹内涼が左腿裏を痛めたが、すでに5枚の交代枠を使い切っていたために痛めた患部をテーピングで固め、前線にポジションを変えて最後まで出場した。ただ、竹内の怪我以前から前半同様に横浜FMの猛攻を受け続けていたが、なんとか凌ぎ切り、2-2の引き分けとして7連勝中の2位横浜FMから貴重な勝ち点1をもぎ獲った。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。