「すぐに何かがおかしいと分かった」 エリクセン昏倒の瞬間を主審が回想
EUROのデンマーク対フィンランドを担当したテイラー主審が当時の状況を振り返る
今年6月に行われた欧州選手権(EURO)グループリーグ初戦のデンマーク対フィンランドの一戦で、デンマーク代表MFクリスティアン・エリクセンは試合中に突如意識を失い、心停止状態に陥るアクシデントに見舞われた。この試合の主審を務めたアンソニー・テイラー氏が、英公共放送「BBC」のインタビューで当時の状況を振り返った。
デンマークの背番号10を背負って大会に参加したエリクセンは前半終了間際、左サイドでスローインを受けようとした際に突然ピッチに倒れ、そのまま意識を失った。心停止状態となる危険な状況だったが、チームメートのDFシモン・ケアーが気道確保の応急処置を行い、メディカルスタッフによる胸部圧迫などの迅速な対応もあって一命を取り留めた。
この試合で主審を務めていたのが、イングランド人のテイラー氏だ。元刑務官という経歴を持つ同氏は、エリクセンが倒れた瞬間について次のように振り返っている。
「(エリクセンが深刻な状態に陥ったことが)すぐに分かりました。クリスティアンは1人で突然倒れました。彼の近くで起きたことは、膝にボールが当たっただけでした。彼が倒れた時、私は直接彼のことを見ていました。倒れた時の彼を、顔も見ていたんです。そしてすぐに何かがおかしいと思いました。それが一番気がかりなことでした」
「私の優先事項は選手の安全でした」と話すテイラー氏は、エリクセンが倒れたのを確認してすぐに医療スタッフを呼んだ。その迅速な判断が光ったが、同氏は「あの夜の真のヒーローはデンマークのキャプテン(ケアー)と、心肺蘇生と除細動を行ったメディカルスタッフだ」とデンマーク代表チームに称賛を送った。
エリクセンの昏倒によって試合は約2時間の中断を余儀なくされ、無事が確認された後に再開された。即日の再開についてはデンマーク代表を率いたキャスパー・ヒュルマン監督や、代表OBのGKピーター・シュマイケル氏が苦言を呈すなど物議も醸した。
主審として決断を迫られていたテイラー氏は、「みんなが次に何をすべきかを求めて私のところにやってきた。試合を続けるのか? そうではないのか? どうすればいいのか? どのくらい待つのか? 私はUEFAの代表者と協力して自分の仕事を務めました。最初の不幸な状況の後から、全員の感情のコントロールなど私にはやるべきことはたくさんあったのです」と当時の様子を回想。現場は相当な混乱状態だったと明かしていた。
(FOOTBALL ZONE編集部)