日本の「あってはならないミス」と称賛に値する敵将采配 英記者がNZ戦の苦戦を分析
ニュージーランドの堅守を崩せずPK戦で辛勝、日本は「神経質になっていた」
U-24日本代表は7月31日、東京五輪サッカー男子の準々決勝でU-24ニュージーランド代表と対戦し、120分間を0-0で終えて迎えたPK戦を4-2で制し、2大会ぶりのベスト4進出を決めた。主導権を握りながらも苦戦を強いられた一戦を、海外の識者はどのように見たのか。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を6大会連続で取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、ニュージーランドのフィジカルを生かした組織的な守備を前に、日本が「神経質になっていた」と指摘。序盤に起きた「あってはならない」ミスと、1トップの人選にも疑問を投げかけた。
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谷晃生、吉田麻也。この2人は、日本が53年ぶりとなるオリンピックのメダル獲得への望みをつないだPK戦のヒーローとして称えられるだろう。
しかし、本当のヒーローはボールの反対側にいた。ニュージーランドは最も経験豊富な選手を失い、選手層の薄いメンバーのなかで疲労と戦いながら、メダル獲得を目指す日本チームとの戦いで運が絡むPK戦まで持ち込んだ。
森保一監督のチームは、メキシコ戦、フランス戦で見せたような最高のパフォーマンスを発揮することができず、苦しみ、自分たちの優位性をゴールに結びつけるクオリティーを再び失ってしまった。
10日間で4試合をこなす過密日程が影響したのだろう。日本は神経質になっていたようにも見えた。チームが達成しようとしていることの重大さが、青のユニフォームを着た選手たちの心に浸透していたようだ。
クリス・ウッドの身体能力の高さの前に、吉田はいつもの自信に溢れた姿ではなく翻弄されていた。遠藤航が決定機でゴールを決められず、序盤のアドバンテージを生かすことはできなかった。遠藤があれほど前線に出ていくことは、これまでほとんどなかったが、前半10分の場面は確実にゴールを決めるべきだった。
あのミスは、いつも最終ラインの前で冷静に役割をこなしている選手によるものだったとはいえ、このような大一番のゲームではあってはならないことだった。久保建英の仕掛けや堂安律のトリッキーさをもってしても、ニュージーランドを崩すことはできなかった。終盤に堂安のクロスに合わせた上田綺世のシュートもGKマイケル・ウートにセーブされた。
ニュージーランドと日本の対戦は、日本にとって開幕戦の南アフリカ戦を彷彿とさせるものであり、その困難さはまさに日本が調布(東京スタジアム)で直面した状況と似たものだった。“オリ・ホワイツ”もフィジカルが強く、守備が良くオーガナイズされたチームだった。森保ジャパンはウィンストン・リードが見事に統率したバックラインを攻略するのに苦労した。
ニュージーランドのGKウートは十分な働きをし、日本がディフェンスラインを破った時には完璧な最後の砦となっていたが、それでもスペクタクルなセーブを要求されるような場面はほとんどなかった。
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。