マン・Uの約270億円補強は“パニック・バイ”か、“新銀河系軍団の誕生”か

露呈した弱点

 この試合でマン・Uは4-3-1-2システムを採用したが、そもそもアンカーで出場した新加入のブリントは、ユース時代からボランチのスキルも備えていたユーティリティーなプレーヤーではあるが、アンカーが適任のタイプではない。
 このシステムでの1ボランチには試合を統率する展開力も求められ、レアルのトニー・クロースやリバプールのスティーブン・ジェラードのような深い位置からのゲームメイク能力も要求される。
 ブリントは、しばらくウイングバックやディフェンスでプレーしていたこともあり、比較的深い位置でのポジションを取ることが多い。場合によってはDFラインに吸収され、5バックのようなかたちとなる場面も少なくなかった。
 一方、レスター戦で、中盤でコンビを組んだディマリアとエレーラに与えられている役割はセントラル・ミッドフィルダーである。だが、ピッチに立った彼らは明らかにオフェンシブ・ミッドフィルダーとして振る舞っていた。
 ディマリアも、エレーラも、その特長は攻撃にある。どちらも前所属クラブでは中盤の2列目の位置でプレーしており、守備に対しての意識はそれほど高くない。
 その場合、どういう現象が起きるのか。前掛かりになるディマリア、エレーラ、深い位置取りをするブリント。この2つのポジションの間には、致命的なスペースが生じてしまっていた。
 レスターはその空洞化したスペースを突くことで決定的なチャンスを何度も創出してみせた。マン・Uの黄金時代を知るOBでイングランド代表コーチを務めるガリー•ネビル氏は試合の解説でこう語っている。
「前半相手のFWに対するロングボールは、全てレスターの選手に奪われていた。ファーストボールもセカンドボールもだ」
 ネビル氏の指摘した現象を招いた理由としては、DFラインのタレントにも問題があるが、相手に中盤の空洞化を突かれた結果でもあった。巨額を投じたスーパースター軍団は、あまりにももろく崩壊してしまったのだ。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング