久保のゴールを闘莉王が“DF目線”で分析 天国と地獄を分けた「幻のワンタッチ」とは?
【五輪経験者の視点】南アフリカ戦で久保が決めた決勝ゴールの凄さを闘莉王氏が解説
U-24日本代表は22日、東京五輪グループリーグ初戦でU-24南アフリカ代表と対戦し、1-0で勝利した。53年ぶりのメダル獲得へ白星スタートを切ったなか、「Football ZONE web」で五輪期間中のスペシャルアナリストを務めている元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏が試合を分析。MF久保建英が決めた圧巻の決勝ゴールのシーンで、天国と地獄を分けた「幻のワンタッチ」について解説してくれた。
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この試合のマン・オブ・ザ・マッチは久保建英でしょう。南アフリカが全く前に出てこない展開で、相手ゴールをこじ開ける必要があったなかでの、あの1点は大きい。特にトーナメントの初戦なので価値は計り知れない。
このゴールが生まれたポイントがある。田中碧からのパスを受けて、久保は左にボールを持ち出して左足を振り切ったけれど、普通ならもう一歩ボールを持ち出して、インサイドに入っていた場面だと思う。もうひと運びすれば、シュートのアングルが広がる。ニアサイドを狙うという選択肢も出てくる。そこからシュートというのが、対峙したDFとしても想定する局面だったかなと考える。
だが、久保はあそこで見事に決めた。相手GKはあのシュートに触っていた。ポジション的にシュートを止めることは不可能ではなかったと思う。では、なぜ止められなかったのか。GKはブロックに入った味方にシュートが当たり、コースが変わることも想定していたと思う。シュートは味方の腰あたりの高さを抜けたが、もっと低かったら味方に当たっていたかもしれない。そこでGKに迷いが生まれ、反応がコンマ数秒遅れた。
駆け引きもあった。久保は左からもう1人(相手)選手がサポートで出てくると予想したのかもしれない。もうワンタッチしていたら、選択肢は広がるが、ブロックされるリスクもある。そんな読みから思い切り、左足を振り切ったのだろうか。
文句なしに素晴らしいシュートだった。しかし、駆け引きの勝利と運もあったと思う。“幻のワンタッチ”を省いたことで、決勝点は生まれた。ここでゴールを取れていなかったら、日本のグループリーグ突破は見えてこなかったかもしれない。そう考えると、まさに値千金のゴールだ。
[プロフィール]
田中マルクス闘莉王/1981年4月24日、ブラジル出身。渋谷幕張高を卒業後、2001年に広島でJリーグデビュー。03年に日本国籍を取得し、04年アテネ五輪に出場した。その後は浦和でJ1とACL初制覇、名古屋でもJ1初優勝に貢献。06年にはJリーグMVPを受賞した。日本代表としても43試合8得点の成績を残し、10年南アフリカW杯ベスト16進出の立役者に。19年限りで現役引退。Jリーグ通算529試合104得点で、DF登録選手の100得点はリーグ史上初。現在は公式YouTubeチャンネル「闘莉王TV」でも活動中。