F・トーレスを再生させた情熱の指揮官シメオネ “たった一言”の真実とは

愛するクラブを立ち去った皮肉な運命の先で

 07年夏、トーレスは自身の成長とビッグタイトルの獲得を目標に、UEFAカップの出場権すら獲得できない体たらくを繰り返していたアトレチコを去った。だが皮肉なことに、彼が最高の輝きを発していたのは同じくチームタイトルに恵まれなかったリバプール時代までで、チェルシーに移籍した11年以降はUEFAチャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)、FAカップといった悲願のビッグタイトルを手にする傍ら、自身は深刻なゴール欠乏症と相次ぐけがに苦しみ続けてきた。要は丸4年もトップフォームを失ったままなのだ。

 一方、アトレチコもこの7年半で大きく変わった。トーレス不在1年目のシーズンに12年ぶりとなるCL出場権を獲得すると、翌年にはクラブ史上2つ目の国際タイトルとなるEL優勝を果たした。そしてディエゴ・シメオネが監督に就任した12年以降は右肩上がりの成長を遂げ、1年目に2年ぶり2度目のEL制覇、2年目にUEFAスーパーカップとスペイン国王杯獲得、そして3年目の昨季は18年ぶりのリーガ・エスパニョーラ優勝にCL決勝進出と、クラブ史上最高の成功を手にし続けている。

 全盛期の輝きを失って久しい元エースと、欧州トップクラスの強豪に成り上がった元ダメクラブ。立場が逆転した両者の現状を考えれば、トーレスが以前のように絶対的エースとして活躍するのは難しいと考えるのが自然の流れであった。

 

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