F・トーレスを再生させた情熱の指揮官シメオネ “たった一言”の真実とは
エルニーニョ(神の子)の愛称を持つ、アトレチコ・マドリードのフェルナンド・トーレス。
かつて輝きを放った古巣に復帰したのが、昨年1月のこと。チェルシー、ミランで過ごした4年は、いつも敗者の哀愁を漂わせ、曇りがちな表情を浮かべてきた。
だが今は、まるで我が家に戻ってきたかのように、背負ってきた重い荷を下ろし、かつてがそうだったようにノビノビとプレーを続けている。背伸びをしてきた少年は、最高の遊び場へと戻り、再びその輝きを取り戻している。
なぜトーレスは、アトレチコで復活を遂げたのだろうか。そこには、至高の指揮官から掛けられた、“たった一言”にあった――。
トーレスが7年半ぶりにたどり着いた安住の地
昨年1月、7年半ぶりにロヒブランコ(赤白)のシャツをまとっての復帰後初ゴールは、あまりにもあっさりと、しかし強烈なインパクトを伴う形で生まれた。
自陣左サイドでのインターセプトから瞬く間に前線左サイドへとボールが渡る。ペペと入れ替わる形で裏へ抜け出したアントワーヌ・グリーズマンが逆サイドにクロスを送ると、これを受けたフェルナンド・トーレスは左足で軽やかにボールを蹴り込んだ。
2015年1月15日に行われたスペイン国王杯5回戦セカンドレグ。キックオフ時の大歓声がうそのようにサンティアゴ・ベルナベウのスタンドが突然の沈黙に包まれるまで、わずか約40秒間の出来事だった。
「見に来てくれたファンのためにも、これまで一度もゴールを決めたことがなかったスタジアムで復帰後初ゴールを決められたことにも満足している。素晴らしい一日を堪能できたよ」
後半開始直後に勝ち越しゴールを決め、宿敵を退けての準々決勝進出の立役者となったトーレスは、試合後のインタビューで爽やかな笑顔を浮かべながらそう話していた。