セリエA「緑色ユニフォーム禁止」とクラブカラー 色はサポーターの“最後の砦”

クラブ自体が当初、色に執着していない例も…

 もし“緑禁止”がJリーグにも適用されたら、多くのチームが対応を迫られる。湘南ベルマーレ、松本山雅FC、FC岐阜、東京ヴェルディに至ってはチーム名が「ヴェルデ(緑)」からきているのだから堪ったものではない。現実的には色調を変えるなどの対応になるのだろうが、それはそれで「こんなの俺たちの緑じゃない」という話になりそうである。

 一方で、そんなにこだわらなくてもいいんじゃないかという意見も分からないではない。というのも、クラブ自体が当初、そんなに色に執着していない例はいくつもあるからだ。

 ヴィッセル神戸は白黒の縦縞が、オーナーが変わった途端に楽天カラーに変わっている。リバプールの赤はビル・シャンクリー監督の発案で変えていて、リーズの白はなんとレアル・マドリードの真似だという。ユベントスは当初ピンク色のユニフォームだったが、イングランドのノッツカウンティの白黒ストライプに変えた。ピンクが色落ちしやすいので、英国から取り寄せたらノッツカウンティのモデルが来たというのが発端。東京Vの緑も、フランスのサンテティエンヌのユニフォームを雑誌で見て真似したのが始まりらしい。バルセロナのエンジと青は、創始者のジョアン・ガンペールがスイス人で、自分がかつてプレーしたFCバーゼルと同じだ。

 今となっては絶対不可侵のカラーだが、起源をさかのぼるとそれになった理由が案外に軽かったりするわけだ。だが、重みは始まりよりもそこから積み重ねた歴史と記憶のほうにある。たかが色、されど色なのだ。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)



page1 page2

西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング