「誰のための五輪なのか」 吉田麻也、無観客開催の見直しを要望「真剣に検討してほしい」
強豪スペインと1-1ドロー、試合直後に言葉を選びながら東京五輪の無観客開催に言及
東京五輪のグループリーグ初戦を5日後に控えたU-24日本代表は17日、ノエビアスタジアム神戸でU-24スペイン代表との国際親善試合に臨み1-1で引き分けた。五輪“金メダル候補”に善戦した一戦には制限付きながら4909人の観衆が入ったが、本大会は無観客での開催が決定。それについて試合後に問われた主将のDF吉田麻也(サンプドリア)は、難しい状況であることを踏まえたうえで「誰のための五輪なのか」と疑問を呈し、「もう一度考えてほしい、真剣に検討してほしい」と無観客開催の見直しを求めた。
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五輪本大会で金メダル候補のスペインとの一戦で、日本は序盤から劣勢を強いられるものの、前半42分にMF久保建英(レアル・マドリード)の個人技からチャンスを作り、最後はMF堂安律(PSV)が左足でニアサイド上を射抜いて先制。両チームがメンバーを大幅に入れ替えた後半に失点し勝利こそ逃したものの、本大会を前に世界の強豪に十分渡り合えることを示した。
ハーフタイムでベンチに退いていた吉田は、試合直後にキャプテンとしてインタビューに登場。そこでも言葉を選びながら、無観客開催への無念の思いを明かしていたが、試合後のオンライン会見でも改めてその話題について率直な胸の内を明かしている。
吉田は「(アスリートが)どっちにコメントしても叩かれるのは間違っていると思う」と現状の難しさについて語ったうえで、「大会をやるにあたって、国民の税金がたくさん使われている。なのに、国民が観に行けない。誰のための五輪なのか」と、五輪の無観客開催に疑問を呈した。
もちろん、新型コロナウイルスの感染者が増加に転じている状況で、開催するリスクは重々承知しており、吉田も「ソーシャルワーカーの皆さんが命をかけて戦ってくれている。五輪ができるだけでも感謝しないといけない」と語っているが、「もっとできることはある」とし次のように続けた。
「僕たちができることは、子どもたちをただ家の中に閉じ込めて、友だちと会わずに事が過ぎるのを待つだけではない。僕も娘がいる。4歳でプレーしているのを覚えていないと思うが、そういうこと。子どもたちにいろんなものを与えられると思う。オンタイムで(スポーツを)観られるのは、(自分が)2002年のワールドカップでそうだったように、ものすごい感動、衝撃を受ける。
忘れないでほしいのは選手も人生を懸けて戦っているから、ここに立てている。それはこの1年、2年ではない。人生を懸けて戦っている。五輪に懸けている選手はマイナー競技に山ほどいる。そのためにも、もう一度考えてほしい、真剣に検討してほしい。
僕らの家族もそう。じいちゃん、ばあちゃんも、孫が五輪に出る姿をリスク背負って観たい人もいる。家族も僕も、いろんなものを犠牲に我慢して、僕たちをサポートしている。選手だけではなく、家族も戦っている。それが観られない大会は誰のためのものなのか?」
吉田は12日にヨドコウ桜スタジアムで行われたU-24ホンジュラス代表戦(3-1)後にも、無観客への無念さを滲ませるコメントを発していた。これまでワールドカップや五輪など数々の大舞台を経験してきたからこそ、スポーツが持つ力を認識している吉田。東京都をはじめ感染者数が増加している状況で、誰もが難しさを感じているものの、トップアスリートの1人として声を上げた。
(FOOTBALL ZONE編集部)