【月間表彰】「まさに理想のDF」 栗原勇蔵×森重真人対談…対人の技術を磨いた“原動力”とは?

森重のDFとしての良さはサイズがないがゆえのプラスアルファ!?

――栗原さんが現役の時に何度も対戦してきましたし、日本代表でも一緒にプレーされた経験があると伺いました。お互いのプレーについてはどのような感想を持っていたのですか。

森重 勇蔵さんは代表の時から人に強いという印象がありますね。どちらかというと、自分にちょっと足りない部分を持っているとすごく感じていました。

栗原 そう? モリゲは対人がめちゃくちゃ強いイメージだよ。ディフェンスの上手さはもちろんあるし、ビルドアップやボールコントロールの上手さもある。点も取れるし、まさに俺の理想というか、なんでもできるDFでマツさん(松田直樹)に近いと思っている。それに代表で一緒だった時に感じたんだけど、体がめちゃくちゃごついわけじゃないのに当たり負けしない。セットプレーの練習の時に手で押さえられたことがあって、「こいつ、すげー手首強いな」と思ったことがある。ボンバー(中澤佑二)もそうだけど、相手をコントロールする腕の力が凄いなって。これは、FWも動けなくなるよって(苦笑)。

森重 僕は体の大きさがないので、空中戦の時にちょっとポジションでミスしたりすると、ヘディングが届かなったりするんですよ。だからサイズがないがゆえのプラスアルファみたいな感じなんです。僕からすれば、体のサイズ感はコンプレックスでもあるので、大きいセンターバックと比べられた時に引けを取らないようにしなきゃいけないという思いはずっとありました。だから恵まれていない分、当たり前のことをしっかりやっていましたね。

栗原 実際に大きい選手にも負けていないし。何が足りないんだ(笑)? 

森重 やっぱりサイズですよね。

栗原 もちろんサイズはあるに超したことはないけど、あっても動けない選手もいるから。でも、モリゲの場合は体のサイズ以上にいろんなことができる。もし、誰かに変わっていいよって言われたら、間違いなく俺は「森重真人」って言うからね。

森重 うれしいですね。ありがとうございます!

栗原 まだまだコロナ禍でのシーズンは続くけど、昨年からなかなかファン・サポーターの皆さんとのふれあいがないじゃない? スタジアムにお客さんがいることとか、試合中の拍手とか、改めてファン・サポーターの存在の大きさを感じたんじゃない?

森重 いやー、それは本当にめちゃくちゃありがたいなと感じています。スタジアムや練習場に来られない状況でも、ファンレターや手紙が届きますし、SNSでたくさんコメントも届きます。僕は公式ブログをやっているので、そこでも交流があったりします。もともとファン・サポーターのありがたさというのは分かっていたつもりですけれど、コロナ禍になって改めて見てくれている、応援してくれる人が自分のモチベーションになっていたんだというのは、昨年は本当に感じましたね。

栗原 そうだね。応援してくれる人がいなかったら、ただ単にサッカーをやっているだけになってしまうからね。年を重ねてくると、より応援してくれる人の有難みを感じるよね。それが幸せなんだよ。

森重 僕自身、長く東京にいるので、いい時ばかりじゃなくて、迷惑をかけていた時期もあったので(苦笑)。応援してくれるファン・サポーターのためにも、次は僕らが与えるじゃないですけど、彼らへの恩返しのためにも、目に見える結果をチームに残したいなと思うようになりましたね。

栗原 じゃあ、あとはJ1でのリーグ優勝を勝ち取るだけだね。

森重 そうですね。僕自身、ナビスコカップ(現ルヴァンカップ)、天皇杯、J2リーグ優勝は経験しましたが、J1でのリーグ優勝だけがまだ手にしていないので、そこは狙いたいですね。リーグ優勝って、1年間結果を出し続けて最後に与えられるもので、継続してやり続けることや結果を出し続けることって難しいなと個人的にも感じていましたし、自分自身もそれが苦手なタイプだと感じています。

2019シーズンに横浜F・マリノスが優勝した時も、残り数試合で逆転できるチャンスがあったのに、他のチームに手こずってしまって苦しい状況で横浜FMとの最終戦を迎えました。あの時、自分のサッカー人生に置き換えても、結果を出し続けることの難しさを改めて突き付けられた感じがしたんです。まだまだ僕のサッカー人生は続くので、その課題にしっかりと向き合い、結果を出し続けて、Jリーグタイトルを取るところにチャレンジしていきたいですね。

栗原 引退するまでには最低でも1、2回は優勝してほしいな。期待しているよ!

[プロフィール]
栗原勇蔵(くりはら・ゆうぞう)/1983年9月18日生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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