「中田英寿やケーヒル級の選手がいない」 豪州記者、W杯最終予選“同組”の日豪へ警鐘
【識者コラム】W杯アジア最終予選でまたも同居、B組は「見た目より厳しいグループ」
クアラルンプールで行われた先日のカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の組分け抽選会は、ゲストのいないリモート形式だったこともあって大きな興奮はなかったが、最後の黄色いボールが開かれた時、オーストラリアでは熱狂と困惑が入り混じったリアクションが起きていた。
これで何度目の再会だろう。日本とオーストラリアは、またしてもメジャートーナメントの予選で一緒に戦うことになった。
この2つの国は半世紀以上にわたってサッカーで結びついてきた。最初の激突は1956年のメルボルン五輪だった。その後、日本サッカー殿堂入りを果たしている横山謙三や宮本輝紀、渡辺正、森孝慈、小城得達らが出場していた1970年W杯アジア・オセアニア予選でも対戦している。
1994年のキリンカップ、2001年のコンフェデレーションズカップでも2つの国は対戦してきたが、2006年にオーストラリアがAFCに加盟したことで“現代のライバル関係”
が始まった。そして驚くべきことに、オーストラリアと日本はそこから2006年のW杯、2007年と2011年のアジアカップ、2013年の東アジアカップ、そして直近3回のW杯予選すべてで対戦している。
まるで何十年もの間、同じ誕生日プレゼントを受け取っているようで、このライバル関係は歓迎されているようだが、今回ばかりはオーストラリアのサッカーファンも、これまでとは違う感情を抱いているような気がする。
それはサッカルーズ(オーストラリア代表の愛称)にとって、もう一つの可能性がイランだったからだ。1998年W杯予選のプレーオフ、ピッチに1人のクレイジーなファンが乱入してゴールネットを引き裂く事件が起きたあの「メルボルンの悲劇」で、オーストラリアのW杯出場の望みを打ち砕いたイランとも歴史的なライバル関係だったからだ。
悲しいかな、ここでそれは実現しなかった。とにもかくにも、グループ1位と2位がカタール行きの権利を獲得できるなかで、日本とオーストラリアが仲良くトップ2のシード国となっている。
まず、サッカルーズと日本が気をつけなければならないのは、このグループが見た目よりも厳しいグループだということだ。サウジアラビアは脅威であり、ベトナムは技術的に優れ、機動力のある選手を育成することにかけてはアジア最高の国の一つとなっている。
ベトナムは元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏を育成部門に招聘し、ユース施設に多額の投資を行ってきた。ゴールデン・スター・ウォリアーズ(ベトナム代表の愛称)は、アジアサッカー界の新たな巨人となりつつある。彼らのことを侮るのは危険だ。
スコット・マッキンタイヤー
東京在住のオーストラリア人ジャーナリスト。15年以上にわたってアジアサッカー界に身を置き、ワールドカップ4大会、アジアカップ5大会を取材。50カ国以上での取材経験を持ち、サッカー界の様々な事象に鋭く切り込む。