東京五輪“不選出”は「自分の実力」 負傷明けの原輝綺に“元日本代表SB級”の飛躍を期待
【J番記者コラム】大分戦に1-0勝利、決勝点はDF原輝綺のJ1で4年ぶりのゴール
前回のホームゲームから1カ月以上が経ち、第20節を終えて清水エスパルスの順位は14位。7月中旬からのオリンピック中断期間までは、残留争いに巻き込まれないために勝利が必要な下位チームとの連戦が続く。
まず、前々節で同じ勝ち点15で並んでいたベガルタ仙台に2度のリードを追い付かれる展開から、最後は振り切り3-2での勝利。続く前節は4試合連続完封負けで勝ち点8の最下位に沈む横浜FCに対して1-1の引き分けで、勝ち点2を取りこぼした。そして今節は勝ち点13の19位で、ここ3試合でも無得点で1分2敗と苦しんでいる大分トリニータとの対戦。約2カ月前の第12節では7連敗中の大分に0-1で敗戦していることもあり、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督は「大分の順位は下だが、それは関係なく相手に多くのダメージを与えられる強力なチーム」と試合前に警戒を強めていた。
清水は直近2試合でのスタートのフォーメーションを、4-4-2と3-4-3と相手によって使い分けているため、この試合でも大分の片野坂知宏監督は「3バックでくるのか、4バックでくるのか」と、どちらのフォーメーションでも対応できるように準備はしてきたようだったが、前半は様子を窺う、リスクを冒さない試合展開となった。ただ、それは清水も同じで、立ち上がりこそチャンスは作ったが、飲水タイム後は均衡を破れずに時間が過ぎた。
それでも前2試合ではスタート時のフォーメーションが上手くハマらずに前半終了間際と後半からシステム変更をしているが、この試合では4-4-2でスタート。後半に先制点を挙げて相手の圧力が増す後半39分に5-3-2に変更するまで、その形は保たれた。これは2ボランチのMF竹内涼とMF宮本航汰に次ぐ走行距離で、攻撃時は相手ゴール前まで駆け上がり本来のサイドハーフの仕事をこなし、相手が自陣に入って攻撃を仕掛けてくれば最終ラインまで戻り攻守でバランスを取っていたMF片山瑛一の存在が、大きくこのシステムを機能させていた。
また、DFエウシーニョが左内転筋肉離れで離脱してしまったが、そこには第9節ヴィッセル神戸戦で右足リスフラン靱帯を損傷し、復帰までに約2カ月間を要したDF原輝綺が、エウシーニョとはまた違った形でチームに勢いを与えていた。右サイドのスペースへタイミング良く飛び出して鋭いクロスを何度も供給して、ゴール前のスリリングなシーンを生み出している。サポーターのなかには「市川大祐(現・清水JrユースU-15監督)を彷彿させるクロス」と、元日本代表のクラブレジェンドに重ね合わせている者もいるが、サイドをドリブルで駆け上がりクロスを入れていた当時の市川とは若干タイプは違うものの、そのクロスの質は十分にそこからのゴールを期待できるものだった。
下舘浩久
しもだて・ひろひさ/1964年、静岡市(旧清水市)生まれ。地元一般企業に就職、総務人事部門で勤務後、ウエブサイト「Sの極み」(清水エスパルス応援メディア)創設者の大場健司氏の急逝に伴い、2010年にフリーランスに転身。サイトを引き継ぎ、クラブに密着して選手の生の声を届けている。