マンU「年俸ランキング」を英紙公開 1位は30億円…「犯罪的に安い」選手は?
ラッシュフォードら生え抜きには厳しい評価、マクトミネイは安すぎ?
しかし、やや不公平だと気になったのが、生え抜きFWマーカス・ラッシュフォードの年俸だ。相対的に23歳で年間1040万ポンド(約16億円)の稼ぎは悪くはない。しかし、2つ年下でイングランド代表キャップ数も「24」も下の新加入サンチョに780万ポンドも差をつけられてしまったのはいかがなものか。
しかも、同僚アンソニー・マルシアルもラッシュフォードより260万ポンド(約4億円)高い。年上でユナイテッド史上最高金額で獲得したポグバが、辣腕ミノ・ライオラが代理人ということもあり、1510万ポンド(約23億1000万円)をもらってチーム3位の年俸。そして実績上位の34歳ベテランFWエディンソン・カバーニが、昨季の開幕時の決定力不足が露呈したこともあり、ある種の“ご祝儀オファー”とも言えるが、マルシアルと同年俸の1300万ポンド(約20億円)をもらうのは納得できるかもしれない。しかし、マルシアルの下はどうなのだろう。
確かにラッシュフォードはユナイテッドに少年時代の貧困から救い出してもらったという恩義を感じてはいるとは思う。が、年俸はプロとしての評価の決定版。そこで、サンチョやマルシアルとの比較で少々不公平さを感じてしまっても不思議はないと思う。
さらにリストを見ていくと、ジェシー・リンガードの390万ポンド(約6億円)というのもかなり低いという印象だ。監督が年俸の高い順に選手を優先して使うのは定石。安い選手を使って結果が出なければクラブ内の評判が悪くなる。リンガードは昨季の終盤、ウェストハムにレンタル移籍して大爆発したが、オレ・グンナー・スールシャール監督が高年俸の選手を優先起用し、しかも自分の給料が安くてやる気をなくしていたことが、この大活躍の陰に隠れていたのではないかと思ってしまった。
またメイソン・グリーンウッドの390万ポンド、そして中盤の喧嘩屋として今季は32試合に出場、しかも4ゴールも決めた24歳MFスコット・マクトミネイの年俸100万ポンド(約1億5000万円)は犯罪的に安い。
個人的には、真の黄金時代を作るには1990年代にライアン・ギグス、ポール・スコールズ、デイビッド・ベッカム、ギャリーとフィルのネビル兄弟などの「クラス92」を輩出したユナイテッドや、2000年代半ばすぎに天才リオネル・メッシを中心にシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタなどが開花したバルセロナのように、生え抜きがチームの中心に存在することが不可欠だと思う。
だとすれば、この年俸リストを見る限り、近年ユナイテッドの方針はその時その時のスーパースター優先で、生え抜き選手に対する思慮がやや欠けているのではないだろうか。ともかく自分がラッシュフォードならやや寂しさを感じ、マクトミネイなら“やってらんねえ”と拗ねてしまうのではないかと思ってしまった次第である。
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。