サッカーと選手・監督への「批判」 EUROで興味深かった痛烈な指摘と“返し方”
【ドイツ発コラム】EUROの試合後インタビューで起きたアラバとリポーターの興味深いやり取り
プレーに対して、戦術に対して、システムに対して、ドイツをはじめヨーロッパのメディアではなかなかに痛烈な批判が出てくることが少なくない。そこまで言うか、という指摘だって普通にある。元代表選手が強烈な口調で、「このままでいいわけがない!」と話すことがある。
それに対して欧州の選手や監督は時に聞き流したり、時にマイルドに反応したり、時に大袈裟に返したりというやり取りを見せる。慣れてはいるだろう。
とはいえ、ある程度落ち着いた環境でできるインタビューならまだしも、試合直後のTVインタビューで思いもよらないところから指摘をされたら、選手だって対応に困ってしまう。
オーストリア代表キャプテンのダビド・アラバは現在開催されている欧州選手権(EURO)の北マケドニア戦後のTVインタビューで、「この人、何を言っているんだろう?」という表情を見せていたシーンがあった。
3-1で勝利した後のインタビュー。大事な初戦で貴重な勝ち点3を取った喜びがあるなか、試合展開について振り返っている時に、失点シーンについての話になった。その時にリポーターから、思わぬ反論を受けている。
アラバ「うーん、僕らは早い時間帯に不運なゴールで失点したけど……」
リポーター「不運なゴール?」
アラバ「そうだよ」
リポーター「いや、あれは本来非常に悪い守り方でしたよね」
アラバ「非常に悪い守備だった?」
リポーター「ええ、そうですよね」
(しばらく沈黙)
アラバ「えっと、見ていたんですよね?」
リポーター「あのシーンですよね」
アラバ「あのシーンを見ていたんですよね?」
リポーター「あれは、もちろんミスでもありましたね」
アラバ「誰の?」
リポーター「GKも。ボールは戻されていたシーンでしたし」
アラバ「うーん。オッケー、それでもどんな形で失点したかはとても不運だった。僕からはそう言っておくよ」
試合直後にダイレクトに失点の原因を聞き出そうとするリポーターもなかなかのものだが、最終的に無難に話をまとめたアラバもさすがというところだろうか。
批判は的中していることもあるし、的外れで終わることだってある。ある意味、興味深いのは外れた時の彼らの反応だったりする。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。