カテナチオはどこへ? 「イタリアらしくない」アズーリ、EURO強豪国の“似通う特徴”
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【識者コラム】“寄せ集め”の代表チームこそ国のカラーは出やすいが…快進撃のイタリアは事情が異なる
イタリアらしくないイタリアが2連勝で欧州選手権(EURO)のベスト16一番乗りを果たした(その後ウェールズにも1-0で勝利し3連勝)。
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ナショナルチームはよく言えばオールスター、悪く言えば寄せ集めである。そして寄せ集めのほうが、国のカラーが出やすいというのが近年の傾向だ。
普段プレーしているのは外国のクラブで、国もバラバラということが普通になっている。ブラジルがその典型だが、ヨーロッパもそういう代表チームが多く、その点では日本もそうだ。寄せ集めだから連係はなさそうだし、緻密な戦術も使えそうにない。ところが、寄せ集めなのにそうは思えないチームは珍しくない。
例えば、高校サッカー部のOBが集まって試合をする。もうチームもバラバラだし、コンディションもまちまち。なのに、意外とチームプレーがちゃんとできたりする。今時「同じ釜の飯」でもないが、互いの長所欠点を分かっていて不思議と呼吸が合う。育ったベースが同じだからだろう。
寄せ集め型ナショナルチームに国柄が出やすいのは、それと似ている気がする。育成期に共有したものがチームを括る紐だから、その国の伝統はちゃんと受け継がれていくし、むしろそれが頼みの綱でもある。
一方、自国リーグの選手だけでほぼ代表を編成できる国もある。スペイン、ドイツがそうだ。スペインはバルセロナ、ドイツはバイエルン・ミュンヘンと同じスタイルで2010年、14年のワールドカップでそれぞれ世界一になった。普段から一緒にプレーしている選手を中心にしているから、当然ながら連係は良い。ただ、スペインとドイツのサッカーに国柄が表れているかというと、そうでもない。むしろあれはバルセロナとバイエルンのサッカーであって、リーグの他クラブはそんなサッカーはしていなかった。
イングランドは代表に転用できるクラブがなかったので、ずっと文字通りの寄せ集めだった。そのせいか選手の質が高い割に成績が伴っていなかったのだが、今回のEUROはマンチェスター・シティが中心になっている。むしろスペイン、ドイツのほうが寄せ集め的になった。
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西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。