ビラ配りもいとわぬ浦和の苦労人が見せたACL8強を引き寄せる一撃 「正直恥ずかしい」
浦和の潤滑油
宇賀神は埼玉県出身で、浦和ユース出身と地元という意味でも、チームという意味でも生え抜きにあたる。しかし、ユースからのトップ昇格はかなわずに流通経済大学へ進学した。そこでは1学年下のMF武藤ともチームメートとしてプレー。プロとして浦和への帰還を果たした苦労人だ。ミハイロ・ペトロビッチ監督が浦和の監督に就任した2012年を前にしたプレシーズンに、宇賀神には海外移籍の可能性があった。しかし、「ミシャのサッカーをやりたいから」と残留を決断した。
そのプレースタイルは、まさに「潤滑油」という表現がピッタリくる。周囲のポジションになる浦和の左サイドには、過去から現在を振り返ってもDF槙野智章やMF原口元気(現ヘルタ・ベルリン)、MF梅崎司、MF武藤といった個性の強い選手がポジションを取ることが多かった。その中で「自分は周りの選手の良さを引き出せるように考えている」と、自身のプレーをアジャストしている。
GK加藤順大が大宮へ移籍した昨季から副主将と選手会長を務めているのも、ピッチ内外で気配りのできる宇賀神だからこそだ。
左足クロスが武器のDF橋本和やMF梅崎のサイド起用など、何度かポジションを失う危機はあった。今季も、攻撃的にシフトする後半にはMF関根貴大やMF駒井善成というドリブラーが投入されることもある。それでも、スタメンとなると宇賀神がいつも選択肢のトップにくる。コンビネーションを重視する“ミシャ・サッカー”において、彼をしのぐ存在はチーム内外を見渡してもなかなか見つかるものではない。結局、今も浦和の左サイドには背番号3のバランサーがいる。