吉田麻也の決意 アウェーでブーイングの標的になった日本代表DFの意思表示

「楽しむしかないでしょう。逆にもっと騒がせてやろうって」

 

 こうした形でも、日本人がピッチの主役となったところを見るのはうれしかった。真剣勝負のプレミア・アウェーで、相手サポーターにブーイングを浴びるのは光栄なことといっていいだろう。

 しかもこのスウォンジーとサウサンプトンの試合は、今季好調の中堅クラブ同士の戦いで、両者が激しくぶつかる見応えある内容だった。そして結果的にサウサンプトンが11対10の数的有利を活かし、1-0で僅差の勝負をものにして、なんと今週プレミアの2位に浮上した。

 そんな試合後、ブーイングの中でのプレーは反骨心がにじみ出て迫力があったと麻也にいうと、「それじゃ毎回アウェーでやってもらいたいですね」といって笑わせた後、「まぁ、楽しむしかないでしょう。逆にもっと騒がせてやろうって思っていかないと」と続けた。

 こうした麻也の戦う姿勢の裏には、今季もサウサンプトン内に巻き起こっている、センターバック4人でのレベルが高い激しいレギュラー争いがある。

 昨季はクロアチア代表DFデジャン・ロブレンの加入で1年目に手にした不動のレギュラーの座を失った。そのロブレンがリバプールに移籍。今回は開幕から主将フォンテとのコンビで3試合先発フル出場を続け、1年目のような活躍が期待できる状況になったかに見えた。

 ところが、クーマン監督は8月の移籍期間中にルーマニア代表DFフロリン・ガルドス、ベルギー代表DFトビー・アルデルウェイレルトを獲得。欧州の強豪国のセンターバック2選手を加入させ、麻也にプレッシャーをかけた。

 そして代表週間明けとなった9月13日のニューカッスル戦、現役時代の80年代後半、その頃間違いなく最強だったオランダの名センターバックだったクーマンは、敢然とアルデルウェイレルトを先発させた。その前戦となったウエストハム・アウェーを3-1勝利していたにも関わらず、あっさり吉田を引っ込めたのである。結果は4-0。大勝の上、守備陣はノーミスでクリーンシートを記録した。

 このスウェンジー戦、吉田先発を聞いた時、正直驚いた。しかし、ニューカッスル戦で質の高いプレーを披露し、クーマン監督の英断を助けたアルデルウェイレルトは、先週のトレーニングでハムストリングを痛めていた。

 先週、クーマンはアルデルウェイレルトの起用に関し、麻也の代表戦2戦での疲れを理由にしていた。

 監督が先発から外した理由をそう語っていたと麻也に告げると、「(前節のベンチスタートについては)あえて聞かなかったけど、聞いてもそういう答えが返ってくるだろうと思っていた。といっても、トビー(アルデルウェイレルト)を試したいだろうなとも思っていた。こういうチーム内競争があるのは、仕方のないこと。アピールしていくしかない」と話しはじめ、アルデルウェイレルトの実力に幻想は抱いていないとでもいうように、今季のレギュラー争いについて語り続けた。

「昨年はデジャン(ロブレン)がいた。彼はひとり飛び抜けていた。けれども今年は結構みんな均衡している。それで逆にもっと気を抜けない状況になっているので、僕はそれに打ち勝っていくしかない。チームが(昨季の)一桁順位に乗って、勢いがあるといっても、自分がその中に入っていかないといけない。去年と同じようにはならないように、そこは自分でも意識してプレシーズンからやっている。今もさっきいわれたように、4人の中での競争はあるが、結局じたばたしてもはじまらない。それに打ち勝っていくことだけに集中する。やっぱり自分がいいパフォーマンスをしていくことが大切。彼らと直接対決することはないので」

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