吉田麻也の決意 アウェーでブーイングの標的になった日本代表DFの意思表示
相手サポーターにとって最大の悪役となった吉田
9月20日スウォンジー・アウェーで行われたリーグ戦、サウサンプトンDF吉田麻也は南ウェールズ人サポーターの猛烈なブーイングの標的となっていた。
2001年夏にアーセナル稲本潤一、ボルトン西澤明訓が誕生して以来、ポーツマス川口能活、トットナム戸田和幸、ボルトン中田英寿、レスター阿部勇樹、アーセナル宮市亮、マンチェスター・U香川真司と、13年間に渡って英国のピッチに立った数々の日本代表選手を見てきたが、これほど激しいブーイングの対象になった日本人は記憶にない。
そんな、あきれるほどまとまった「BOO!」という怒号の中、麻也の顔はきりっと引き締まっていた。そしてその動きからは“この野郎、ブーイングがなんだ!”というばかりの、激しい気持ちがにじみ出ていた。
この日、吉田麻也にブーイングが集中したのは、日本代表DFが昨季のスウォンジー得点王ボニとマッチアップしたことが原因だった。
昨季34試合で17得点を記録したコートジボワール代表FWは、アフリカ人らしい俊敏さと強さを持つ、DFにとっては本当に手がかかるタイプのストライカーだ。
しかし麻也はこの厄介なFWに堂々と立ち回り、結果的にボニを前半39分という、そこで相手を10人にすれば圧倒的有利となる時間帯で、累積退場に追い込んでしまった。
まずは前半19分のプレー。味方のクリアボールに反応して、ボニが猛然とこの浮き球に突っ込んでくる。スローを見ると、この時のボニは雄叫びまで上げていた。
そのボールの反対側には麻也がいた。速くてでかいアフリカ人の突進にも目もくれず、いち早くボールの落下点に達して頭でクリアした。ところが勢い余ったボニの体当たりを横っ腹に受けてしまう。ここで1枚目のイエローが出た。
2枚目のイエローにつながるプレーはその20分後に起こった。中盤に飛び込んでルーズボールをキープした吉田に、ボニが後方から猛然とタックルすると、足首を引っ掛けられて日本代表DFがもんどりうって倒れ込んだ。
すでにイエローカードを受け取っていたボニの反則で、スウォンジー・サポーターの怒声が倒れた吉田に集中する中、主審は当然といった態度でコートジボワール代表FWに2枚目のイエローカードを掲げ、続いてレッドカードを見せた。
麻也自身も前半31分にイエローを受けていた。相手のウインガー、ダイヤーの危険タックルの直後、主審に「カードを出せ」と右手をふるジェスチャーをして受けた警告だった。
ダイヤーの反則に対してレフリーにカードを要求し、味方のエースとマッチアップして沈黙させたあげく、退場に追い込んだ。こうした3枚のイエローにからむ一連の流れで、サウサンプトンの3番をつけたセンターバックは、この試合でスウォンジー・サポーターにとって最大の悪役になった。