バルサを脅かす1340億円超の負債 改革か、崩壊か…UEFAとの“危険な根比べ”
欧州SLにしがみつく3クラブに必要なのは、UEFAとの争いではなく“救済”
しかし、すでにSLから撤退した9クラブが制裁を受け入れているため、UEFAには妥協するムードがない。そこで現在は周囲の心配を無視し、ファン不在と言っても良い“危険な根比べ”という状況になっている。
そしてストーン記者のコラムの中に記されている、バルセロナの新会長ジョアン・ラポルタ氏が「10億ユーロ(約1340億円)以上ある」と認めたクラブの負債額に関する発言は脅威だ。
ラポルタ新会長は「我々は国ではない。電話一本で“金を送れ”と指示できるわけではない」と前置きすると、「我々は多くのミスを犯した。後に悲惨な結果を招く決断を下してしまった。それがすべてのビッグクラブで行われているとは言わないが、多くのクラブで(同様のことが)問題となっている。一部の人間がクラブの権力を握り、“何が起こっても我関せず”という態度で運営している」と続け、世界的な不況が続くなか、欧州サッカー界だけが例外とでもいうように、バルセロナを含め、複数のビッグクラブが放漫経営のツケに苦しんでいることを主張した。
ただし、ラポルタ氏の場合は、出戻りとはいえ、今年に会長選挙に勝って新任したばかり。前任者に放漫経営の責任転嫁をするのも可能だが、レアルのフロレンティーノ・ペレス会長やユベントスのアンドレア・アニェッリ会長はそうもいかない。
それはともかく、このラポルタ会長の発言に耳を傾ければ、欧州SLにしがみつく3クラブに必要なのは、UEFAとの争いではなく“救済”だということは明白だ。
これが現状だとすれば、最大の問題は、レアル、バルサ、ユーベの3クラブが「自分たちが崩壊すれば、それはサッカー界の崩壊」と捉え「改革が必要」、つまりビッグクラブがこれまでの放漫経営を維持できるだけの分配金をよこせと強く示唆していることに対し、UEFAがどこまで歩み寄るかということだろう。
しかし前述した通り、9クラブを制裁した欧州サッカー連盟に歩み寄る気配は今のところなし。いやはや、これではストーン記者が指摘した通り、8月にならないと何も動きそうもない。
ちなみにアグエロが世界一と称したバルセロナだが、確かに現在のところ負債額はその通りのようである。
(森 昌利 / Masatoshi Mori)
森 昌利
もり・まさとし/1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。